千葉大学 矢口先生が解説「毎日結露する窓は浴室の排水溝と同レベルのカビがいる」/「デコ活」を活用した窓リフォームのすすめ、カビレベルの指標も!
YKK AP株式会社(本社:東京都千代田区、社長:魚津 彰)は、全国各地の計500人を対象に「窓と結露に関する意識調査」を実施しました。その結果、調査対象の77%が窓の結露を経験し、そのうち68%が窓の結露に対して悩んだことがあると回答しました。また、窓の結露によるカビがもたらす健康被害について、「具体的に知っている」と答えたのはわずか10%で、「毎日結露する窓(※1)には浴室の排水溝と同じくらいカビがいる」という事実を「知らない」または「聞いたことがある程度」と答えた人が94%にも及びました。この調査結果を受け、人間の健康に影響を及ぼすカビの分類とその性状解析を研究している千葉大学 真菌医学研究センター准教授 矢口 貴志先生によるカビの健康被害とカビ対策を紹介します。
■調査概要
調査名 :窓と結露に関する意識調査
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国各地の20歳~69歳の男女 計500人
※北海道/東北/北陸/関東甲信/東海/近畿/中国・四国/九州・沖縄の
8エリア別に割付
調査期間:2023年9月15日~9月20日
※調査表・グラフの数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても必ずしも合計とは一致しない場合があります。
【調査結果一覧】 ①窓の結露を経験したことのある人は77%。 経験者のうち窓の結露に悩んだことがある人は68%も存在することが明らかに。 また、特に近畿地域でお悩みが多いという結果に。 ②窓の結露によるカビの健康被害について具体的に知っている人は10%にとどまる。 ③「毎日結露する窓(※1)には浴室の排水溝と同じくらいカビがいる」という事実に対し、 94%が「知らない」または「聞いたことがある程度」と回答。 「窓の結露対策」についても「対策をしていない」人が75%という結果に。 結露対策に有効な「内窓」や「断熱窓」を取り入れている人は少数。 ④窓リフォームを行っていない理由第1位は「費用が掛かりそう」で65%超え。 補助金を使って窓リフォームをしてみたいと考える人は約半数! |
※1:「毎日結露する窓」は、冬季の1週間のうち4日以上結露する窓と定義する。
調査結果①:窓の結露を経験したことのある人は77%であり、そのうち窓の結露に悩んでいる人は68%も存在することが明らかに。また、特に近畿地域でお悩みが多いという結果に。
「冬の時期の、現在のお住まいの住居でお悩み」の第1位は「光熱費がかさむ(暖房費など)」(39%)。第2位は「窓に発生する結露」(36%)、第3位は「室内が寒い」(35%)であり、52%の人は室温の調整や費用に悩んでいることが明らかになりました。
また、上位に挙がった「結露」に関連し、「家の窓の結露を経験したことがあるか」を聞くと、全体の77%が「ある」と回答。地域別にみると最も多かったのが東北地方で91%、次に北海道地方で87%と、寒さが厳しい地域では窓の結露を経験している人が特に多い結果となりました。続いて、窓の結露を経験したことがあると回答した人に対して行った「家の窓の結露で悩んだことがあるか」という問いには、68%が「悩んだことがある」と回答し、地域別に見ると最も多かったのは近畿地方の78%でした。
調査結果②:窓の結露によるカビの健康被害について具体的に知っている人は10%にとどまる。
家の窓の結露を経験し、悩んだことがあると回答した人に対して行った「窓の結露に対してのお悩み」については、68%が「カビが発生する」と衛生面での悩みを挙げました。他にも57%が「カーテンが濡れる」、45%が「掃除が大変」を挙げ、お気に入りのインテリアやお部屋への影響に悩んでいることが明らかになりました。
また「窓の結露から発生したカビによる健康被害について知っているか」を聞くと、「具体的に知っている」と答えたのはわずか10%にとどまりました。42%が「知らない」、48%が「聞いたことがある程度」で、カビの発生に悩みつつも、90%は健康被害について具体的に知らないという事実が浮き彫りになりました。
調査結果③:「毎日結露する窓には浴室の排水溝と同じくらいカビがいる」という事実に対し、94%が「知らない」または「聞いたことがある程度」と回答。結露対策に有効な「内窓」や「断熱窓」を取り入れている人は少数。
カビの健康被害や認識について更に実態を明らかにするため、「毎日結露する窓には浴室の排水溝と同じくらいカビがいるという事実を知っているか」と尋ねると、94%が「知らない」または「聞いたことがある程度」と回答。
また「窓の結露対策」についても「対策をしていない」人が75%という結果に。対策をしている人はわずか25%と、結露の悩みに対処できている人は少ないことが浮き彫りとなりました。続いて「窓の結露の対策術」を聞くと、「窓の水気をふき取る」(33%) 「こまめに換気する」(26%)といった手軽なアクションが上位にあがりました。窓の断熱性を高め結露を生じにくくする「内窓をつける」「断熱性の高い窓に交換する」といった、窓自体に工夫をしている人は少数にとどまりました。
調査結果④:補助金を使って窓リフォームをしてみたいと考える人は約半数!
窓リフォームをしたいと思うメリット1位は「光熱費が削減できる」(49%)、2位は 「結露防止になる」(42%)、3位は「住宅の断熱性が向上する」(40%)
「自宅の窓はリフォーム可能だと知っているか」を聞くと、「知らない」「聞いたことはあるがよく知らない」という回答が63%を占め、そもそも自宅の窓がリフォームできることを知らない人が多数いることが明らかになりました。
また、全回答者に対して、窓リフォームをしたいと思うメリットを聞くと、「光熱費が削減できる」(49%)、 「結露防止になる 」(42%)、「住宅の断熱性が向上する」(40%)が上位3つとなり、家計の負担軽減や快適性の向上が窓リフォームの決め手と推測されます。続いて、窓リフォームを実施したことが無いと回答した人に、窓リフォームを実施していない理由を質問。その結果、「費用がかかりそう」という回答が65%で最も多くなりました。一方で、「補助金がもらえる制度が来年度もあればリフォームしてみたいか」を聞くと、「使ってみたい」「どちらかというと使ってみたい」と、前向きな人が約半数に。窓リフォームは費用面がネックとなっており、それをカバーする補助制度があれば前向きに検討できる人も多くいると考えられます。
■参考情報~「窓の断熱改修(リフォーム)を対象とする補助金」について~
環境省では、2050年カーボンニュートラル及び2030年度削減目標の実現に向けて、国民・消費者の行動変容、ライフスタイル変革を強力に後押しする新しい国民運動「デコ活」を展開しています。デコ活アクション「電気代を抑える断熱住宅に住む」においては、住宅の省エネ化に関するさまざまな補助事業が実施されています。その1つである2023年に実施された窓の断熱リフォームに特化し高い補助額で支援する「先進的窓リノベ事業」について、後継事業である「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」が盛り込まれた令和5年度補正予算案が閣議決定しました。本事業は2023年11月10日以降(※2)に契約した物件が対象で、工事内容に応じて補助率1/2相当、1戸あたり最大200万円の補助金額(※3)が設定されています。国の制度を活用し、来年はさらに快適な住宅環境を整えるのはいかがでしょうか。
「デコ活」脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動 https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/ 「住宅省エネ2024キャンペーン」新着情報 https://jutaku-shoene2023.mlit.go.jp/news/touroku_continuation.html |
※2:補正予算案閣議決定日である令和5年11月10日以降に契約(リフォーム工事に係る請負契約の締結等)を行い、申請する事業者が所定の手続きにより事務局の登録を受けた後(令和5年12月中旬予定)に着工したものに限る。
※3:令和5年11月10日時点の情報です。本事業の内容は変更の可能性があります。事業のより詳細な情報については、「住宅省エネ2023キャンペーン」サイト内の最新情報(https://jutaku-shoene2023.mlit.go.jp/news/touroku_continuation.html)や、事業概要をご確認ください。
回答者の90%が知らなかった!窓の結露によるカビがもたらす健康被害について、
カビ研究のプロ・千葉大学 真菌医学研究センター准教授 矢口 貴志先生が解説
※YKK APより矢口先生へ依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています
カビによる健康被害について
室内のカビを放置していると人に健康被害を引き起こすリスクが高まります。室内の中でも特に「窓の結露」には要注意です。外気との温度差で窓が結露すると、水分と埃などを栄養源にサッシのゴムパッキンにカビが増殖し、そのカビが窓枠やカーテンにも広がることがあります。これまで報告された研究から「毎日結露する窓(冬季の1週間のうち4日以上結露する窓)(※4)」には「浴室の排水溝」と同程度のカビが存在していることが分かりました。カビは増殖し胞子を形成すると、その胞子を大量に吸い込むことによって呼吸器系のアレルギーなどの病気の原因になる可能性もあるので、日頃から結露しづらい環境に整えることが大切です。
結露によって生まれる窓カビ:クラドスポリウム
生活環境中に多く生息し、サッシのゴムパッキンの汚れの原因となる。人に対して呼吸器系のアレルギーを引き起こすこともある。
※4:結露を毎日する窓のカビ数は1520cfu/cm2(浜田信夫著「サッシ窓の結露とカビ汚染の現状」より)、浴室の排水溝のカビ数が1015cfu/cm2(浜田信夫著「浴室のカビ汚染の現状とその対策」より)と判明しているため、同程度と判断しています。窓のカビ数はサッシの内側下のビード(ガラスパッキン)とレール部分の2か所で検証しています。
カビ対策のためにできること
カビの栄養となる埃をためないよう日頃から窓を清潔に保ち、こまめに換気することで結露が起きないように心がけたいですね。とはいえ、忙しい日々の中でこまめに掃除するのも大変です。結露しづらい「樹脂窓」や「二重窓」に取り換えるのも一つの解決策です。窓で最も汚れやすいサッシのゴムパッキンは、結露によってどの程度カビが潜んでいるか目視でのチェックが可能です。黒い斑点が少しでも見つかれば「注意」。黒い斑点は多数のカビの胞子、菌糸の集合体なのです。カビがこれ以上増えないよう、結露対策をしましょう。まずは自宅の窓の状態をぜひチェックしてみてください。
年末の大掃除に向け今こそ!結露によるカビレベルの簡単チェック
窓の中でも最も汚れやすい部分であるサッシのゴムパッキンは、結露によってどれほどカビが潜んでいるか目視でのチェックが可能です。黒い斑点が一つでも見つかれば「注意」。黒い斑点はカビのコロニー(集合体)なのです。カビがこれ以上増えないよう、結露対策をしましょう。
「窓と結露に関する意識調査」では「1年のうちの窓の掃除の頻度」を質問すると、最も多かった回答が「年に1回程度(大掃除のタイミング)」で28%。次に多かったのは「していない」という回答で25%となり、窓掃除が1年に1回以下の回答者が半数以上に及びました。年末の大掃除に向けてまずは自宅の窓の状態をぜひチェックしてみてください。
大阪市立自然史博物館・外来研究員 浜田 信夫先生 監修
「毎日結露する窓は浴室の排水溝と同じくらいカビがいる」根拠資料
住環境におけるカビ研究のエキスパートである大阪市立環境科学研究所 浜田 信夫先生の下記2つの論文を参照し、以下を明らかにしました。
(出典)
①浜田信夫著「サッシ窓の結露とカビ汚染の現状」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei/50/2/50_2_69/_pdf
②浜田信夫著「浴室のカビ汚染の現状とその対策」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/43/3/43_3_89/_pdf
研究者・カビの採取方法が同一の論文を比較したところ、
結露を毎日する窓のカビ数は1520cfu/cm2(※5)、浴室の排水溝のカビ数が1015cfu/cm2(※6)。
矢口先生によると「1520cfuと1015cfuの1.5倍の数値の差は誤差範囲内」。
したがって「毎日結露する窓は浴室の排水溝と同じくらいのカビがいる」と言える。
※5:【検証条件】サッシ窓のカビ汚染の指標として内側下のビード(ゴムパッキン)とレール部分の2か所のカビ数を用いて検証を行った。
※6:【検証条件】大阪市及びその周辺の住宅63世帯の浴室で、1997年8月に浴室内の各部分のカビおよび酵母について、その汚染の実態調査を行った。