「まち暮らし不動産」の屋号で不動産企画・コモンスペース運営を手がける株式会社エヌキューテンゴ(東京都杉並区/代表:齊藤志野歩)が、東京都八王子市天神町で新たなシェアハウス、コモンスペースの運営をスタートします。
まち暮らし不動産は、「まちと関わりながら暮らす人」「まちと共にある不動産オーナー」を応援する不動産会社。みかんハウス(松戸市)、コトナハウス(国立市)、okatteにしおぎ(杉並区)、阿佐谷みずいろの家(杉並区)などに関わってきました。また、空き家利活用に関するコンサルティングや講座、社会教育事業、ジェイアール東日本都市開発が取り組む「高円寺・阿佐ヶ谷プロジェクト」を支援するなど、建築・不動産〜まちづくり〜社会づくりをシームレスにつなぐ事業に取り組んでいます。
■このプロジェクトについて
八王子市天神町は、JR八王子駅から徒歩10分ほどという利便性がありながらも、古くからの繊維工場や商店が残るエリア。空き家となっていた築50年を超える戸建住宅(木造2階建。改修後「OMOYA東棟」)を再生して3住戸のシェアハウスとしました。正面玄関〜勝手口を通り土間としたことで、隣接敷地のアパート(木造2階建/4戸「OMOYA西棟」)の住人も東棟のコモンスペースを日常的に利用可能とし、戸建住宅とアパートを併せてひとつのシェアハウス「八王子天神町OMOYA」と見立てています。
東棟は水周りを共同利用するシェアタイプの住居である一方、西棟にキッチン・バス・トイレのついた個室があることは、世帯構成や年齢に多様さをもたらし、シェアする暮らしをより豊かにします。さらに、東棟のコモンスペース(キッチン・ダイニング)は、OMOYAの賃貸入居者だけでなく、メンバー登録した人が関わりながら使うことができます。メンバーは一人ひとりが会費を負担し、OMOYAを共に育てていきます。さらに、入居者やメンバーが日常使いするキッチンに加えて「ファクトリーキッチン」を整備。菓子製造業の許可取得が可能で、食にまつわる小商いへのチャレンジも後押しします。
単なるシェアハウスにとどまらず、多様な人が暮らしや仕事のかさなりあいを楽しみながら使う・使いながらつくる「まちの共有地(コモンズ)」を目指します。
■プロジェクトの成り立ちー「おもや」から「OMOYA」へ
八王子は古くから養蚕や織物の街です。現在のOMOYA西棟が建つ場所には、かつて繊維関係の工場がありました。隣接した戸建住宅(現在のOMOYA東棟)は、この工場主さんの住居でもあり、工場で働く人の食堂や休憩スペースがあったようです。働く人たちは戸建住宅のことを”おもや”と呼んで、行き来しながら使っていました。
時は流れ、工場主さんは工場を閉鎖してアパート(現存)を建てました。戸建住宅は引き続き工場主さんの自宅となりましたが、2棟の利用上のつながりは失われていました。
その後に2棟を引き受けたのが、土地(底地)所有者であり、本プロジェクトの事業主でもある本立寺(八王子市上野町/代表 及川一晋)。この地域に400年続く同寺は、借地権の返還に伴い建物の取り壊しを求めず、譲り受けたことから、本プロジェクトがスタートしました。かつて工場で働く人たちから”おもや”と呼ばれていた戸建住宅(空き家)は、隣接する建物とのつながりを回復しながら、地域の”OMOYA”という新しい役割を担います。
■OMOYAのメンバーシップとは
OMOYAは賃貸入居者だけでなく、メンバー登録した人(「OMOYAメンバー」)が関わりながら使うことができます。関わり方や利用時間によって月額500円〜の会費を負担し、OMOYAの基本ルールを共有しながら、使い方を工夫したり、イベントを企画したりして楽しめます。メンバー間で晩御飯をつくる・食べるをシェアする「おたがいさまメシ」も予定。当社はメンバーがOMOYAに関わっていくための支援者となります。
賃貸住宅のコモンスペースをメンバー制で運営する試みについては、当社は2015年からokatteにしおぎ(杉並区)等にて実践してきました。当社は、メンバー(入居者含む)の主体性を守りながら、メンバー同士が関係性(つながりかた)の質を高める手助けをするコーディネーターの役割を担います。これは単なる不動産管理者とも、イベントスペース運営者ともスキルや振舞いが異なりますが、このコーディネーターの存在によって、不動産に対して「買う」「借りる」「使う」以外にも「関わる」という選択肢が生まれます。
※OMOYAメンバーの区分や金額等詳細については、メンバー説明会でご案内しています。
■プランニングについて
東棟の改修設計は「里山長屋(神奈川県相模原市)」「神山町公営集合住宅(徳島県神山町)」など、パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりを行う株式会社ビオフォルム環境デザイン室(東京都国立市/代表:山田貴宏)。当社とのタッグは「okatteにしおぎ」に続いて2回目となります。改修にあたっては、国産材の使用、既存建具の再利用はもとより、太陽熱温水器で給湯時のガス利用量を低減、雨水タンクの設置により上下水道の負荷を減らすなど「暮らしやすさの持続性」を考えたプランニングとしています。一方で、正面玄関側に降り口があった階段を思い切って付替えるなど、住人にとっての安心感を確保しながら、OMOYAメンバーにひらかれた場所であるため工夫も凝らしています。
東棟と西棟をつなぐ外構工事は、マメシバ造園(東京都調布市)の河合菜採。既存土地の土・石・平板・レンガなどを極力廃棄せず、利用し続ける工夫を重ねました。特に敷地内のアプローチは株式会社漆喰九一(愛知県名古屋市) 福田正伸氏のサポートを受け、左官の技術で敷地内土壌を再利用。土地の記憶をそのまま閉じ込めた、味のあるアプローチに仕上がっています。
なお、今回改修したOMOYA東棟は1966年築。建築確認は受けているものの完了検査の記録がない建物でした。この場合、増築の確認申請を行うには国土交通省が2014年に定めた 「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に基づくことになります。今回は既存不適格調書の作成に第三者機関の調査(いわゆる「ガイドライン調査」)を要したものの、八王子市や民間確認検査機関の協力を得て、工事を実施することができました。
空き家の利活用が求められる現在においては、既存部分の性能や安全性を高めたうえで増築(または減築)をするなどして、今後の社会要請に応えていく必要があります。とくに本プロジェクトのような、空き家が多くなっている小規模の住宅においても、これらのプロセスが適切に、経済合理性をもって運用されていくことが肝要と考えます。本プロジェクトの取り組みが今後の制度運用の一助となるよう、情報発信に努めてまいります。
■東京都「民間空き家対策東京モデル支援事業(新たな働き方支援)」採択事業
本プロジェクトは、東京都住宅政策本部による令和3年度「民間空き家対策東京モデル支援事業(新たな働き方支援)」に採択されています。この事業は東京都が区市町村等と連携したこれまでの空き家対策の取組に加え、民間事業者等の取組へも新たに直接に財政支援を行うことにより、民間の力や知見を最大限活用しながら、重層的に空き家対策に取り組むために実施されているものです。助成対象は本プロジェクトのうち、ファクトリーキッチンの整備費となります。東京都の空き家利活用の実態に即したモデルケースとなるよう、情報発信に努めてまいります。
■プロジェクト概要
<八王子天神町OMOYA>
所在地
東京都八王子市天神町15-1
建物概要
○東棟(一般住宅)
築年:1966年 構造:木造2階建
延べ面積:131.48平米(既存119.24平米 増築12.24平米)
構成:シェア型貸室3戸、コモンスペース、ファクトリーキッチン
○西棟(共同住宅)
築年:1979年 構造:軽量鉄骨造2階建
延べ面積:114.19平米
構成:賃貸住居4戸
事業主
本立寺(八王子市上野町 代表:及川一晋)
企画、コーディネート、運営
株式会社エヌキューテンゴ(まち暮らし不動産)
設計(東棟)
株式会社ビオフォルム環境デザイン室 https://bioform.jp/
施工(東棟)
株式会社内田工務店 http://jiyusekkeinoie.jp/
施工(外構)
河合菜採(マメシバ造園) https://www.facebook.com/mameshiba.zouen
施工(サイン工事)
伊藤貴大
ロゴデザイン
南部良太
イラスト
五味健悟 https://gomikengo.com/
既存建物のガイドライン調査実施
日本ERI株式会社
東棟増築部分の建築確認
東京都八王子市
※オープン前後からトークイベントを開催しています。どなたでもご参加いただけます。
詳細は https://omoya.jp
リリース掲載元:https://www.n95.jp/news/news-33192
八王子天神町OMOYAプロジェクト: https://omoya.jp
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