コロナ長期化、物価上昇そして円安で住まい探しも変化。コロナ禍で躍進した街は“借りて”「町田」「川口」、“買って” 「茅ケ崎」「学芸大学」
事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULL(ライフル)(以下LIFULL、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井上高志、東証プライム:2120)が運営する、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」は、実際の物件問い合わせ数からユーザーの「本気」で住みたい街をランキングした『LIFULL HOME'S コロナ第7波下で変化の兆候?住みたい街ランキング』(2023年版中間結果)を発表しました。首都圏、近畿圏、中部圏、九州圏のランキング中間結果と合わせて、コロナ第7波や物価上昇、円安が、住まい探しに与える影響や最終結果の傾向予測について解説をします。
※LIFULL HOME'S 総研 副所長 チーフアナリスト 中山登志朗(なかやま・としあき)による、近畿圏、中部圏、九州圏に関する結果の分析・考察は各エリア版 特設サイトに掲載しています。
『LIFULL HOME'S コロナ第7波下で変化の兆候?住みたい街ランキング』(2023年版中間結果)
首都圏版 特設サイト
https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_shutoken/
【首都圏版ランキング中間結果のポイント】 テレワーク&物価高騰で郊外化加速 郊外でも“高コスパ”で便利な街の人気高まる
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- 首都圏版「借りて住みたい街」ランキング2023年版中間結果
コロナ以前から徐々にランキングを上げてきた「大宮」がコロナ禍で初の1位!
上位は郊外エリアがほぼ独占 23区内では「葛西」が唯一のベスト10入り
首都圏版「借りて住みたい街」ランキング中間結果 詳細:https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_shutoken/
コロナ禍で2年連続1位の「本厚木」を僅差で抑えた「大宮」が暫定トップ
首都圏版「借りて住みたい街」ランキング2023年版中間結果は、コロナ禍で注目され2年連続1位に輝いた「本厚木」を僅差で抑え、「大宮」が暫定ながら初のトップを獲得しました。
「大宮」は都心から電車で30分程度、埼玉県の中心で、駅勢圏(駅周辺の繁華性の高いエリア)も広く、都心同様に生活利便施設が豊富にそろっていて県内屈指の人気を誇ります。コロナ禍の長期化で、郊外化したニーズが少しずつ都心方面へと揺り戻し始めており、ユーザーが支持(問い合わせ)する街が2020年には箱根や軽井沢、宇都宮など首都圏外まで郊外化していたのが、徐々に都心に近寄ってきていますが、「大宮」は生活・交通利便性、物件の豊富さなどを兼ね備えており、その象徴的な存在として1位に輝きました。中間結果から、郊外人気は依然高いものの、コロナ長期化で同じ郊外でも人気になるエリアが都心方面に近づいてきていることがうかがえます。以下、暫定2位には「本厚木」、3位「八王子」、4位「柏」、5位「三鷹」とベスト5はいずれもJR山手線のターミナル駅まで乗り換えなし、しかも最短で20~40分程度でアクセス可能という共通点があります。
テレワークと物価上昇でコスパ重視 “身の丈郊外”な街に注目集まる
ベスト5以外でも「川口」(12位)、「船橋」(14位)、「橋本」(17位)、「立川」(18位)など、東京のベッドタウンとして機能してきたエリアが上位に躍進し、賃料が都心と比較して安価に済む割に、生活利便性も交通利便性も良好な街=“高コスパ”な街への注目が高まっています。テレワークと出社との併用が定着し、通勤ラッシュが大幅に改善されたことで、都心から1時間程度離れても快適に通勤可能な移動負荷の少ない街、かつ物価上昇を受けて“生活防衛”の意識が働き、コロナ禍でのライフスタイルに合った“身の丈郊外”を積極的に選択する賃貸ユーザーが増えています。
総括:首都圏賃貸ユーザーの“郊外志向”継続 下半期も“コスパの良い街”が支持されるのか?
2022年上半期はコロナ第6波が発生し、政府の方針で行動制限が実施されないまま日常生活を送ることになったため、個人の自覚・感覚に基づいて慎重な行動をする人からコロナ前の生活に戻ろうとする人までさまざまな行動様式が見られました。賃貸ユーザーも傾向は同じで、都内の利便性の高いエリアに住みたいという要望が一部見られたものの、都心方面にダイレクトアクセスが可能な郊外エリアの注目度はさらに高まり、自分にとって経済面でも生活面でも程よい郊外の街=“身の丈郊外”に転居して、マイペースで生活するというスタイルが定着し始めています。果たして、第7波の拡大によって下半期も同様の行動様式が継続するのか、最終結果が注目されます。
- 「借りて住みたい:コロナ禍で順位を上げている街&下げている街」(首都圏版)
中間結果1位の「大宮」および僅差で2位の「本厚木」は、いずれもコロナ前の2019年版(2018年調査)では7位と11位、上位にはランクしていましたが当時は「池袋」「中野」「高円寺」ほか都心&周辺の街がベスト10をほぼ独占しており、さらに上位へと進出する可能性は高くありませんでした。ところがコロナ禍の発生とそれに伴うテレワークの導入などによって、その後の順位は大きく変わっています。
■コロナ前と比べ順位を上げた準近郊&郊外の街
「大宮」はコロナ前の2019年以降、7位→5位→2位→2位→暫定1位とコロナ禍に入ってからベスト3に躍進し、「本厚木」も11位→4位→1位→1位→暫定2位とコロナ禍でトップをうかがう位置を確保しています。他にも「八王子」は2019年の10位→暫定3位、「柏」は2019年の16位→暫定4位、「町田」同17位→暫定7位とコロナ前と比べ大きく順位を上げていますが、これらの街(駅)はいずれも駅勢圏が広く、生活利便性が確保されているという共通点があります。また都心へもダイレクトにアクセス可能で、たまに通勤するにも便利な駅ばかりです。
■コロナで順位を下げた都心&周辺(23区内)の街
コロナ以前の2020年版(2019年調査)まで4年連続1位だった「池袋」は2021年以降5位→12位→暫定13位と順位を下げ続けています。賃料水準の高さと利便性はトレードオフの関係にありますが、コロナで多少利便性が劣っても賃料のより安価なエリアに住みたいというニーズが顕在化したため、都心一等地や高利便エリアは総じて順位を下げています。他にも「高円寺」は2019年4位→暫定20位、「中野」3位→暫定25位、「目黒」21位→暫定47位など都心周辺で人気のあった街はほとんど大きく順位を下げる結果となりました。
- 首都圏版「買って住みたい街」ランキング中間結果
2020年から3年連続1位の「勝どき」が暫定トップを守る
マンション開発の有無で注目度が劇的変化 「半蔵門」「田町」ほか都心も急上昇
首都圏版「買って住みたい街」ランキング中間結果
詳細:https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_shutoken/
マンション開発の注目度がエリア人気に直接影響「勝どき」は広めの物件が高評価
首都圏版「買って住みたい街」ランキング2023年版中間結果は、コロナ前の2020年版(2019年調査)から3年連続トップを守っている「勝どき」が、今回も暫定1位となりました。
以前、倉庫や物流の拠点だった勝どきエリアは、2000年に都営地下鉄大江戸線が開通してから都心至近の湾岸の街としてタワーマンションや超高層オフィスなどが建設され、順調に発展し続けてきました。「勝どき」は東京五輪選手村の最寄り駅であり、その跡地が総戸数5,632戸(うち賃貸1,487戸)の新たな街“HARUMI FLAG(晴海フラッグ)”として生まれ変わることから、全入居が完了するまで注目が薄れる気配はありません。
マンション分譲活性化エリアが上位進出 コロナで郊外でもマンション開発進む
「勝どき」のほか、前回2位の「白金高輪」が暫定3位、「半蔵門」が233ランクアップの暫定7位と急上昇し、「田町」が同61位→暫定8位、「江戸川橋」も同75位→暫定9位と大きく順位を上げています。いずれも注目のマンション開発が行われているエリアであり、マンション開発エリアの最寄り駅が上位に進出しているという「勝どき」と同じ状況が発生しています。4位には16ランクアップした「茅ケ崎」、前回同率5位だった「平塚」「本厚木」もそれぞれ暫定5位、暫定6位と健闘しており、依然として首都圏郊外での人気も高く維持されています。
総括:首都圏購入ニーズは都心と郊外に二極化 テレワークへの対応が住みたい街を決める
首都圏の住宅購入ニーズは、2022年版(2021年調査)からさらに都心と郊外との“二極化”が進み、テレワーク中心の生活に切り替えているユーザーは郊外でオンとオフを過ごすためのより広い住宅を求め、コロナ後の揺り戻しや資産性を強く意識するユーザーは利便性・資産性を重視して都心周辺で住宅を選択する傾向があります。このようなニーズの二極化を受けて、供給サイドも物件価格が高騰する都心周辺と価格が比較的安定している郊外での新規供給をともに活発化しています。コロナ第7波の拡大に伴うテレワーク実施率の上昇と円安による物価上昇懸念もあり、購入ユーザーも価格面から郊外を視野に検討していますから、最終結果ではさらに大きな順位の変動も考えられます。
- 「買って住みたい:コロナ禍で順位を上げている街&下げている街」(首都圏版)
暫定1位を含めて4回連続のトップを維持した「勝どき」や暫定3位とコロナ禍でも人気を維持する「白金高輪」はともに大規模なマンション分譲がコロナ禍とは関わりなく進行したことによる結果と見ることができます。コロナ前の2019年版(2018年調査)では「勝どき」は16位、「白金高輪」は82位でしたから、マンション開発の計画が公表された以降に順位が急上昇しています。
■コロナ前と比べ順位を上げた都心&周辺の街
「勝どき」は2019年以降16位→1位→1位→1位→暫定1位と断トツの注目度を誇っています。また「白金高輪」は総戸数1,247戸の“SHIROKANE The SKY”のほかにも大規模な分譲計画が複数あり、今後も注目度は高いまま維持される可能性が高まっています。1,000戸を超える大規模プロジェクトは都内でも限られますが、他にも「学芸大学」は117位→暫定18位、「亀戸」も2019年198位→暫定64位に急上昇しています。
■コロナで順位を下げた都心&周辺の街
「目黒」はコロナ前の2019年版(2018年調査)では1位を獲得していますが、その後21位→8位→15位→暫定16位と順位を落としており、「恵比寿」も同3位→暫定102位、「大井町」同5位→暫定290位と急激な順位低下が発生しています。これは駅周辺での比較的大規模なマンション開発が終了し、販売も完了したことから注目度が下がり、これにコロナの影響も重なったものと考えられます。
- 近畿圏版「住みたい街ランキング」中間結果 詳細:https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_kinki/
- 中部圏版「住みたい街ランキング」中間結果 詳細: https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_chubu/
- 九州圏版「住みたい街ランキング」中間結果 詳細:https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_2023_kyushu/
■分析・解説:LIFULL HOME'S 総研 副所長 チーフアナリスト 中山登志朗(なかやま・としあき)
出版社を経て、 1998年から不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間多数の不動産市況セミナーで講演。2014年9月にHOME'S総研副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。
■ 調査概要
対象期間:2022年1月1日 ~ 2022年6月30日
対 象 者 :LIFULL HOME'S ユーザー
┗首都圏版 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
┗近畿圏版 大阪府、京都府、兵庫県
┗中部圏版 愛知県、岐阜県、三重県
┗九州圏版 福岡県
集計方法: LIFULL HOME'S に掲載された賃貸物件・購入物件のうち、問い合わせの多かった駅名をそれぞれ集計
算出方法:平均家賃(借りて住みたい街)は以下の条件で算出
マーケット:賃貸(居住用のみ)、専有面積:50m2以下、抽出条件:平均値
平均価格(買って住みたい街)は以下の条件で算出
マーケット:中古マンション、専有面積:30m2~70m2、抽出条件:平均値
分析: LIFULL HOME'S 総研
【LIFULL HOME'S について】(URL:https://www.homes.co.jp/)
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【株式会社LIFULLについて】(URL:https://lifull.com/)
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現在はグループとして世界63ヶ国でサービスを提供しており、主要サービスである不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」をはじめ、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など、この世界の一人ひとりの暮らし・人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指し、さまざまな領域に事業拡大しています。