木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホーム(本社:東京都新宿区、社長:宮沢俊哉)は、木造8階建てビルを普及資材、工法、施工により「普及型純木造ビル」を建築することを決定しました。
昨今、純木造ビルのトレンド化が加速し、環境配慮の観点からも木材利用の拡大が進んでいますが、非住宅建築物の木質化には、地場の工務店をはじめとする日本全国の作り手が施工できるプロトタイプとすることが、重要なポイントだと考えております。本建築物は、特殊技術、特殊部資材を多用せず、日本で最も普及している木造軸組み工法の製材、プレカット加工技術などの生産システムを使い、「普及型純木造ビル」として、木造住宅の作り手が施工を担うことにより、従来の木造ビルの2/3のコストを目指します。また、敷地内には低層中大規模木造建築物も2棟建築予定です。
日本古来より社寺建築でも取り入れられた伝統技術と、大学とも共同で研究開発を進めてきた現代技術を融合させ、ビル建築、公共建築物などの新たな選択肢の一つになり、木造の街並みを復興する一翼を担えればと考えます。完成は2024年を予定しており、アキュラホームの新社屋となります。
■計画概要
・所在地:埼玉県さいたま市西区三橋5丁目978番ほか
・敷地面積:約 8.944㎡
・中大規模建築物①:普及型純木造ビル・・・高さ31m、8階建て
・中大規模建築物②:低層中大規模木造建築物・・・1,500㎡が2棟、2階建て
・主要用途:事務所、宿泊体験棟、ショールーム(約2,000坪)、スタジオ、駐車場 ほか
■普及資材、工法、価格で純木造ビルを実現することで、非住宅建築物を木造に普及型純木造8階建てビルと1,500㎡の中大規模木造建築物を「普及型」プロトタイプとして実現
昨今では、純木造ビルのトレンド化も加速し、非住宅を木造に変えることでの木材利用拡大が進んでおり、都心商業ビルでも木造建築をうたうプロジェクトが10近く存在しています。しかしながら、これらのビルは、構造に鉄骨を利用し、木のパネルで被覆したり、鉄骨やコンクリート造などとのハイブリット工法のため、一部の施工会社のみ可能なものとなっています。また助成金を使ってもコストがかかっているため、必然的に、シンボリックな建物として建築され、一般建築への普及の道は遠いものとされています。
アキュラホームグループではこれまで一般流通構造材料と住宅用木材プレカット加工技術を採用することで、コストを格段に抑え、特殊な技術や資材を使用しない方法で、中大規模木造建築の普及実現に向けた取り組みを行ってきました。2016年には埼玉北支店社屋を建築。2017年にはつくば支店社屋を、特別な金物を一切使用しない一般大工による施工で実現しています。今回の普及型純木造8階建てビル建築においても、普及資材、工法、価格で実現することで、非住宅建築物においても、木造の選択肢が広がると考えます。日本の住宅業界の7割超は全国の中小工務店が担っており、地場の工務店をはじめとする全国の作り手が施工できる中層木造のプロトタイプとすることが、牽いては非住宅建築物の木質化において、重要なポイントだと考えております。
■日本の伝統工芸の匠の技と、木の魅力が存分に感じられる空間に
低コストで可能な中大規模木造建築のプロトタイプを構築し、日本の街並みを木質化するという構想に、4名の著名な研究者・建築家にご賛同いただきました。木質構造研究では日本一と言える東京大学教授の稲山正弘氏、さらに組子構造による美しい建築を手掛ける野沢正光氏、木を活かしたダイナミックな建築を手掛ける原田真宏氏・原田麻魚(まお)氏に設計を依頼し、木造の建築技術を存分に体感できる建物となる予定です。純木造では日本初の耐震構造ビルであり、8階建て高さ31mの計画です。室内に木のあらわしで構造体が露出され、その構造体は世界に誇る伝統工芸の匠の技(組子)を駆使する、これも世界初の構造となります。耐震は免震装置に頼らず、木の構造体だけで実現させます。建築プロセスでは特注金物や大きな機械、特別な機械に頼らず、普及部材で建築。実際の建築には地元工務店に依頼し、一般建築技術の向上にも寄与できる建築とします。
アキュラグループのものづくりの基本である工夫と技術で、画期的な低コスト(坪120万円以下)という通常の2/3に抑えた、普及価格帯の実現を目指していきます。また、アキュラホームが施工いたします。
設計者プロフィール
稲山正弘氏(Masahiro Inayama)
1958年愛知県生まれ。1982年 東京大学工学部建築学科卒業。1990年 稲山建築設計事務所(現・ホルツストラ)設立。日本の木質構造家。東京大学大学院木質材料学研究室教授。木質構造研究会会長。中大規模木造プレカット技術協会代表理事。2002年 日本建築学会賞(技術)、2002年 松井源吾賞、2009年 JSCA賞、2014年 日本建築仕上学会賞、2019年 日本建築学会教育賞など、数々の賞を受賞。
野沢正光氏(Masamitsu Nozawa)
1944年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒業後、設計事務所を経て野沢正光建築工房を設立。当初より、自然エネルギーの利用にとどまらず、豊かな周辺・外部環境とともにある、環境と応答する建築に取り組む。これまでに、「ソーラータウン府中」で2020年度グッドデザイン金賞、及び第18回日本建築家協会環境建築賞 優秀賞(住宅建築部門)受賞など、数々の賞を受賞。著書には、「パッシブハウスはゼロエネルギー住宅」他。現在、横浜国立大学理工学部建築都市・環境系学科非常勤講師。
原田 真宏氏(Masahiro Harada) ・ 原田 麻魚氏(Mao Harada)
2004年 「MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO」設立。代表作・受賞歴 <住宅>『XXXX 』『 Tree house 』『 PLUS 』 『海辺の家』 『立山の家』<施設・社宅>『YOTSUBAKO 』『 Seto 』『TRUNK HOTEL』『知立の寺子屋』『A&A LIAM FUJI』『ROOFLAG』『FLAPS』<公共施設>『道の駅ましこ』『tonarino 』『Entô』2003年 SD Review 鹿島賞、 2008/2009/2011/2015年 AR Awards、2009 年 Design Vanguard 、 2010 年 RECORD HOUSES 、 2010/2014 年 LEAF Awards 、2015年 JIA 新人賞、 2015 年 AACA 芦原義信賞、 2017/2018 年 AIJ作品選奨、2018年 JIA 日本建築大賞、2018/2021年 BCS賞、2020年 日本建築学会賞(作品)、その他国内外での受賞多数。
■SDGsの14のゴールにも関連 1棟のビルで住宅約500戸分の木材を利用
昨今では、利用期を迎えた国内の森林資源の活用が問題視されており、50年を超える人工林が50%と、計画的循環利用が必要とされています。森林の若返りには、木材利用を拡大することが有効であり、2050年脱炭素社会に向けて、木造建築物は一定炭素を固定できる第二の森林とも言われています。また、17のゴールのうち、14のゴールは森林の循環利用、木材利用に関連することから、SDGsの目標達成にも大きく寄与します。
2021年6月公共建築物木造利用促進法が改正。10月より施行。公共建築物から民間建築物を含む一般建築物全般が対象となり、木造建築推進の機運が高まっています。今回の純木造ビル建築においては、全ての構造材を木造とすることで、1棟のビルで約500戸分の木材を利用します。
■今後のスケジュール
2022年着工、2024年度の竣工を目指しています。 また、これからの時代のオフィスの在り方について検討を重ね、オフィスを都心から郊外に移すことで、これまでと同等の費用で面積は8倍以上となることを今年の7月に発表しています(ニュースリリース:https://www.aqura.co.jp/newsrelease/210728/)。アキュラホームグループは、豊かな暮らし提案企業として、地域に根差しながらSDGsの達成に貢献してまいります
※日本初:
1)免震装置に頼らない耐震構造による構造体の木を現しとした木造8階建て
2)木構造体の接合部を特殊な金物に頼らず日本古来の継手・仕口の技術を住宅用プレカット工場で量産加工してつくる木造8階建て
3) 伝統的な木組み技術とビスだけで壁倍率20倍を超える高耐力組子格子壁を使った木造8階建て