木曜日, 12月 11, 2025
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「日本創生に向けた人口戦略フォーラム in やまなし」開催報告 ― 若者・女性にも選ばれる地方を目指して『やまなし宣言』を採択

産官学金労言と若者・女性が一堂に会し、人口減少克服に向けた議論を展開

人口減少克服に向けた戦略を議論する「日本創生に向けた人口戦略フォーラム in やまなし」を11月23日(日)、山梨県甲府市のYCC県民文化ホールで開催しました。このフォーラムは、山梨県や県内経済団体の代表者、民間主導で人口減少問題に取り組む「未来を選択する会議」のメンバーらでつくる実行委員会が主催したもので、関東地方で初開催となる今回は約700人が来場しました。

今回のフォーラムでは、「若者・女性にも選ばれる地方になるために」をテーマに、関東地方10都県の知事ら産官学金労言※、若者・女性が、人口減少という“静かな有事”を克服し、次世代に希望ある未来を引き継ぐための方策や課題を、シンポジウム形式で議論しました。

※「産官学金労言」とは

これまでの「産官学」に「金(金融)」「労(労働)」「言(言論・メディア)」を加えて、多様な主体の連携・協働を促す考え方です。

シンポジウムでは、「希望の未来を叶える住まいと住環境の整備」「女性が地方で活躍する社会を創るために」「人材希少社会における人的資本経営」の3つのテーマを軸に意見交換を行いました。

フォーラムの結びとして、人口減少問題を克服するため、一人ひとりが自分事としてこの課題に向けて行動していくことなどを盛り込んだ、「日本創生に向けた『やまなし宣言』」を登壇者全員で行い、閉幕しました。

フォーラムは、人口減少という国全体の課題に対し、多様な主体が一体となって議論する全国的にも貴重な場となりました。採択した「やまなし宣言」を出発点に、私たちは具体的な取組を加速させ、若者や女性に選ばれる魅力ある地方の実現に向けて挑戦を続けます。

開催概要

日時:令和7年11月23日(日)

場所:YCC文化ホール大ホール(山梨県甲府市)

主催:日本創生に向けた人口戦略フォーラム in やまなし実行委員会

後援:厚生労働省、こども家庭庁

プログラム詳細

オープニングセレモニー

ダンスチーム「スーパースクワッド」によるパフォーマンス

開会挨拶

山梨県知事 長崎幸太郎

三村明夫 未来を選択する会議 共同代表

シンポジウム(1):希望の未来を叶える住まいと住環境の整備

コーディネーター

増田寛也

未来を選択する会議共同代表

株式会社野村総合研究所顧問

パネリスト

福田富一

栃木県知事

熊谷俊人

千葉県知事

阿部守一

長野県知事

長崎幸太郎

山梨県知事

松本明子

東京都副知事

岩下泰善

茨城県副知事

津久井治男

群馬県副知事

堀光敦史

埼玉県副知事

首藤健治

神奈川県副知事

平木 省

静岡県副知事

シンポジウム(2):女性が地方で活躍する社会を創るために

コーディネーター

野本知里

株式会社ヒトスパイス代表取締役

パネリスト

佐々木啓二

株式会社ササキ代表取締役

田中千晶

山梨県障害者文化展で2年連続最優秀知事賞受賞

勝 美希

株式会社YSKe-com第一ソリューション部課長

Momoka

山梨専門インフルエンサー

シンポジウム(3):人材希少社会における人的資本経営

コーディネーター

山崎史郎

内閣官房人口戦略本部・全世代型社会保障構築本部総括事務局長

パネリスト

宇佐川邦子

株式会社インディードリクルートパートナーズリサーチセンター上席主任研究員

金山雄一郎

旭陽電気株式会社代表取締役社長

長澤重俊

山梨経済同友会代表幹事、株式会社はくばく代表取締役社長

杉原孝一

連合山梨会長

古屋賀章

株式会社山梨中央銀行代表取締役頭取

閉会・やまなし宣言

当日映像

■ シンポジウム(2) 「希望の未来を叶える住まいと住環境の整備」

人口減少克服へ多様な戦略を共有

第1部では、人口減少問題の克服に向け、住まいと住環境を切り口にした戦略をテーマに関東地方10都県の知事らによる議論が行われました。

登壇者からは、子育て世代が安心して暮らせる住宅の供給や、所得向上による生活基盤の強化、移住・定住促進、まちづくりなど、それぞれの地域の特色を分析した上で、各都県が力点を置いて取り組んでいる多様なアプローチが示されました。

特に、「頑張れば報われる社会」を実現するための賃金水準引き上げと生産性向上の取り組み、子育て世帯向け住宅の基準策定と実証実験、古民家再生や空き家活用に向けたマッチング、多様な移動手段の確保による交通環境の改善、デジタルを活用したスマートシティ構想による均衡ある県土づくりなど、具体的な施策が紹介されました。

また、若者や女性に選ばれる地域づくりを目指し、教育の充実や働き方改革、企業誘致による雇用創出、県民所得の向上など、ライフスタイルや価値観に寄り添った政策の重要性も強調されました。

議論の中では、自治体間での人口の奪い合いではなく、日本全体で出生率を高める視点や、政策の立案や効果を検証するためのデータ活用、国と地方の役割分担の見直しの必要性も共有されました。

最後に、コーディネーターの増田寛也氏が、「データに基づいて、それぞれの立場で自分事化して取り組むことが必要」と強調し、本日の議論が政府の人口戦略本部へ反映されることを期待する言葉で締めくくりました。

シンポジウム(1)登壇者
コーディネーターを務めた増田寛也氏
登壇した知事ら(左から長崎幸太郎山梨県知事、首藤健治神奈川県副知事、津久井治男群馬県副知事、松本明子東京都副知事、福田富一栃木県知事)
登壇した知事ら(左から阿部守一長野県知事、熊谷俊人千葉県知事、岩下泰善茨城県副知事、堀光敦史埼玉県副知事、平木省静岡県副知事)

■シンポジウム(2)「女性が地方で活躍する社会を創るために」

人口減少時代における多様なキャリアと企業の挑戦

第2部では、女性が地方で活躍できる社会の実現をテーマに議論が行われました。人口減少に伴う労働人口の減少という課題を背景に、女性や多様な人材が活躍できる環境づくりの重要性が強調されました。

インフルエンサーとして活躍するMomoka氏は、行政の施策や地域の取り組みが「知られていない」ことが課題であり、情報発信の工夫と距離を縮める仕組みづくりが不可欠と指摘しました。

田中千晶氏は、病気で手足が不自由になった経験を踏まえ、「一生懸命取り組めることを見つけることで、人は輝ける」と語りました。絵やパラスポーツを通じて社会との接点を取り戻した自身の体験を紹介し、障害の有無にかかわらず、誰にとっても暮らしやすい社会を「当たり前」にすることの重要性を訴えました。

勝美希氏は、管理職への不安を乗り越えた体験を共有し、「やまなし女性Miraiクエスト」※への参加を通じて「自分らしいリーダーシップ」を確立したことを報告しました。女性が挑戦しやすい環境を整えるためには、ロールモデルの存在と情報の入手が不可欠だと強調しました。

佐々木啓二氏は企業経営者の立場から、女性が活躍できる場づくりが企業成長に不可欠とし、柔軟な働き方や管理職登用を支える企業文化の重要性を語りました。さらに、「山梨えるみん」※などの認証取得を重ね、制度を継続的にブラッシュアップしている取り組みを紹介。こうした「働きやすい会社づくり」が採用力や企業価値の向上につながると強調しました。

議論では、情報発信と受け手のギャップ、人材採用戦略の難しさも共有され、企業・行政・個人が連携して解決策を進める必要性が確認されました。

最後に議論を総括し、コーディネーターの野本知里氏から「ロールモデルの存在が鍵であり、私たち自身もその役割を担えるよう発信や取り組みを続けていきたい」との決意が示されました。

シンポジウム(2)登壇者
コーディネーターを務めた野本知里氏
登壇したMomoka氏(左)と田中千晶氏(右)
登壇した勝美希氏(左)と佐々木啓二氏(右)

※「やまなし女性Miraiクエスト」とは

県内企業における女性管理職比率を高め、女性活躍を促進することを目的に、女性管理職候補者に対し、スキルアップ研修と企業内プロジェクトの企画・実践を組み合わせて実施し、実践力を強化する取組です。

https://www.pref.yamanashi.jp/danjo-kyosei/miraiquest.html

※「山梨えるみん」とは

女性活躍推進に積極的に取り組む県内企業を県が認定し、その事例を広く紹介することで、女性が活躍できる職場環境づくりに向けた意識改革を促進し、同様の取組を進める企業の増加を図る制度です。

https://www.pref.yamanashi.jp/danjo-kyosei/yamanashieruminninteiseido.html

■シンポジウム(3)「人材希少社会における人的資本経営」

人口減少時代を生き抜く企業戦略と地域の未来

第3部では、人口減少に伴う労働力不足という構造的課題に対し、企業や地域がどのように「人的資本経営」を実践し、持続可能な成長を実現するかをテーマに議論が行われました。企業経営者、金融機関、労働組合、採用・組織活性の専門家など、第一線で取り組むリーダーが登壇し、現場の知見と戦略を共有しました。

冒頭、コーディネーターの山崎史郎氏から「人材希少社会とは、企業が人を選ぶ時代から、人が企業を選ぶ時代への転換を意味する」との問題提起があり、子育てしやすい環境や働きやすい職場を整え、若者や女性に選ばれる企業づくりが、採用力の強化だけでなく人口増にも寄与するとの視点から、人的資本経営の重要性が強調されました。

金山雄一郎氏は、託児所や子育て支援センターの設置、オープンオフィスなどウェルビーイング経営を紹介し、「取組を従業員一人ひとりの幸せに落とし込むことが重要」と語りました。

長澤重俊氏は、男性育休100%取得やプレコンセプションケア※普及など、働き方改革を人口減少対策と結びつける視点を示し、経営層と子育て世代の意識のギャップを埋める必要性を訴え、経営者の意識変革が重要であると強調しました。

古屋賀章氏は、人材育成・生産性向上・エンゲージメント強化が企業の持続的成長に不可欠とし、働きやすい職場と賃金向上が地域を強くし、人口増につながると指摘。金融機関として人材育成やDX、人事制度改革など多様な支援を行っていると紹介しました。

杉原孝一氏は、労働組合の立場から「AI時代だからこそ、人を資本と捉え、一人ひとりが学び成長できる現場づくりが未来への投資」と強調し、「AIとともに、人の力を最大限生かす働き方を目指し、人が主役の未来を築いて参りましょう」と呼びかけました。

宇佐川邦子氏は、人材育成を起点に離職率改善や賃金アップを実現した企業事例を紹介し、「採用が難しいとされる業界や地域でも、透明性やキャリアアップ制度、DX活用によって人材確保と定着は可能」とエールを送りました。

議論を総括しコーディネーターが、「若者や女性は社会のルールの中で極めて合理的な行動をとっている。問題は、そのルールを決めているシニア層である」ことを指摘。人口減少のカギは、若者や女性の意識ではなく、リーダー層のマインドの変革だと強調しました。

シンポジウム(3)登壇者
コーディネーターを務めた山崎史郎氏
登壇した金山雄一郎氏(左)、長澤重俊氏(中央)、古屋賀章氏(右)
登壇した杉原孝一氏(左)、宇佐川邦子氏(右)

※「プレコンセプションケア」とは

将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと。個人のライフプラン支援にとどまらず、企業の健康経営や人的資本経営の観点からも注目されています。

■ 日本創生に向けた「やまなし宣言」

フォーラムの締めくくりとして、登壇者一同が壇上に会し、人口減少問題を克服し日本創生を実現するため、「安心して子どもを産み育てられる地域づくり」、「誰もが希望を持って挑戦できる環境整備」、「そして一人ひとりが自分事として行動する国民的運動の推進」を宣言しました。

宣言を読み上げる長崎幸太郎山梨県知事(中央)
やまなし宣言を行う登壇者
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