鹿児島県南九州市の建築会社が挑んだ、日本一の空き家バンク活用
本記事では、過疎地域にある空き家バンク物件に建築会社が向き合い、再生した取り組みを通して、制度活用と建築技術の可能性を紹介します。
鹿児島県南九州市川辺町。
人口減少と高齢化が進み、限界集落も点在するこの町のさらに端にある場所から、ひとつの挑戦が始まりました。
空き家を「負の遺産」にしないため、建築の力で地域の未来をつくろうとする取り組みです。
その挑戦を始めたのは、地域に根ざす一つの建築会社でした。
日本全国が抱える「使われない資産」 2023年時点で空き家は全国で900万戸を超えています。
放置された空き家は、倒壊や防災・防犯面で地域にリスクをもたらし、災害時に支障となるケースも報告されています。
こうした課題を背景に、国や自治体は空き家バンクをはじめ、空き家の活用を進めてきました。

空き家バンクという仕組みと、動きづらい現実 空き家バンクは、所有者が自治体を通じて物件を登録し、購入・賃貸希望者を募る仕組みです。
相場より安価な物件も多く、物価高による新築が難しい時代の選択肢として注目されています。
一方で、空き家バンクの活用が思うように進んでいないのも現実です。
その背景には、次のような理由があります。
・古く、「住みたい」と感じにくい
・購入後の暮らしが想像できない
・改修費用と価値のバランスに不安がある
建物が目の前にあっても、「そこに住みたいかどうか」は別問題です。
社会課題の解決だけを理由に、自分の暮らしを委ねる決断は簡単ではありません。
「この町を空き家だらけにしたくない」
建築会社が“住民”として空き家バンクに参画するという選択ーーー
marukawa(マル川建設)が拠点を置く鹿児島県南九州市も、空き家率の高さが深刻な地域です。
高齢化と人口減少が進む中で、空き家の増加を完全に食い止めることは容易ではありません。
それでも私たちは、地域に暮らす住民として、この状況を見過ごすことはできませんでした。
住環境を生業とする建築会社として、そしてこの町に暮らし続ける当事者として。
「自分たちが暮らす町が空き家だらけの場所になってほしくない」
私たちは、空き家対策の一つとして空き家バンク制度を活用し、地域の将来や空き家活用の可能性を示す一つの実例をつくろうと考えました。
同じ志を持つパートナーとチームを組み、空き家バンクに登録されていた物件を複数検討。
その中から条件の合う一棟を選び、再生に取り組むことを決断しました。

壊して終わらせない。45年先を見据えた再生計画 建物を“骨”に戻す、大規模改修のスタート
その一棟は前所有者が丁寧に住み継いできた、比較的状態の良い建物でしたが、空き家バンク登録から3年以上、買い手がつかなかった築45年の物件でした。
理由は、「暗い」「寒い」「広すぎる」
暮らし方が変わった今のライフスタイルに合わなかったことが、大きな要因です。
私たちは、この建物を単に使える状態に戻すのではなく、これから先45年、安心して暮らし続けられる住まいへ再生することを目指しました。
そのため、主要構造部以外の間取りを一度すべて白紙に戻し、屋根・壁・床を解体して、建物を“骨組みだけ”の状態から再構築する計画としました。
目に見えない部分こそ、空き家再生の価値を決める
築45年の建物を、これから先も安心して暮らせる住まいへ。
完成後には見えなくなる部分の重要性も広く知られる中、そうした部分に重点を置いて改修を行いました。
主な改修内容は以下の通りです。
・屋根の全面改修(葺き替え・形状変更)による雨漏り対策
・腐朽した構造材の差し替え
・筋違・耐力面材の新設、金物工法による構造補強
・床組みの傾き修正
・電気配線、給排水管の全面更新
・全窓を断熱サッシへ交換
・屋根形状を工夫し、夏の日射を抑えるパッシブデザイン
・床・壁・天井への断熱施工

屋根解体作業中

内部解体作業中

屋根・壁・床をすべて解体

床・壁・天井には全て断熱材を
marukawaが「つくる」よりも「暮らし続ける」を重視する理由
大規模な改修では、解体して初めて分かる課題が少なくありません。
その都度、これまでの経験を生かし、仮説を立てながら最善の方法を選択してきました。
marukawaで働くスタッフや職人が目指しているのは、「つくること」そのものではありません。
大切にしているのは、住まい手がこの先も安心して「暮らし続けられること」
その視点の違いが、完成した住まいの質を大きく左右すると、私たちは考えています
行政施策 × 民間技術で実現する、持続可能な空き家対策モデル
本空き家を改修して活用する事例は、全国に数多くあります。
本事例は、行政が運営する空き家バンク制度に、地域に根ざす建築会社が深く関わり、建築技術と発信によって価値を高めた点に特徴があります。
補助金や制度活用にとどまらず、空き家を「住める家」ではなく「住みたい資産」へと転換する道筋を示しました。
「住める程度」の改修であれば、ここまでの工事は必要なかったかもしれません。
しかし、それでは本当の意味での空き家対策や地域の活力向上にはつながるとは言えません。
行政の取り組みに民間が本気で関わることで、空き家は町全体の課題として動き始めます。
空き家に新たな価値を付加し、広く知ってもらうことができる。
人が住むことで、空き家には新たな価値が生まれ、小さな町ほど大きな経済効果へとつながっていきます。
私たちが目指したのは、空き家の一時的な活用ではありません。
空き家バンク物件という制約の中で、構造・断熱・耐久性を新築同等以上に引き上げ、現代のライフスタイルに完全適合させた住まいへ再生すること。
制度活用・技術力・思想、そのすべてをここまで高い次元で融合させた事例は、全国的に見ても極めて稀であり、「日本一の空き家バンク活用」と自負しています。

空き家を再生することは、町の未来を再編集すること
空き家バンク物件を日本一素晴らしく活用することは、この町の新たな価値を生み出すことにつながる。
その実現に取り組むことこそ、地域に根ざす企業の責任だと考えています。
marukawaが拠点を置く鹿児島県南九州市川辺町は、いわゆる「辺境」と呼ばれる場所にあり、周囲には限界集落も点在する小さな町です。
人口は減り、高齢化が進み、空き家は増え続ける。何もしなくても衰退していく状況にあります。
それでも、この状況を見送るのではなく、建築に携わる立場として向き合う選択をしました。
空き家が増えるなら、建築の力で価値を与え直す。
住む人が減るなら、暮らしたいと思える住環境をつくる。
町を変える方法は、大規模な開発や外からの資本だけではありません。
地域に眠る空き家をどう生かすかも、町の未来を左右する大切な選択肢の一つです。
地元の会社として地域に根ざし、土地を知り、人を知り、建物を知っている。
その立場だからこそ、空き家バンクを町の未来につなげる手段として活用できると考えています。
空き家バンク物件を日本一素晴らしく活用することは、一棟の再生にとどまらず、 この町に「まだ未来はある」と示すことにつながる。
限界集落のさらに先、町の端からでも、地域は再生できる。
空き家バンクという仕組みを一つの手段として、建築の力で地域の未来に向き合い続けていきます。








本取り組みをきっかけに、地域内での空き家活用のモデル化を進めていきます。
現在、同様の空き家に関する相談も受け付けています。
↓実際の空間は挿画でご確認ください↓
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marukawa ーマル川建設株式会社ー
鹿児島県南九州市川辺町。
限界集落も点在する地域の さらに端に拠点を構える建築会社。
新築・リノベーション・空き家再生を通じて、「建てること」ではなく「暮らし続ける地域をつくること」を目的に活動。
建築技術を地域課題の解決手段として捉え、行政施策との連携や発信にも積極的に取り組んでいる。
住所 | 鹿児島県南九州市川辺町本別府2522-1
電話 | 0993-56-1348
HP | https://marukawa-k.co.jp/