金利上昇局面における住宅購入環境の変化
「金利がある世界」という言葉が現実味を帯びるなか、今後は政策金利の正常化に伴い、住宅ローン金利も段階的に上昇していくことが想定されます。とりわけ変動金利を中心に金利水準が上がれば、同じ物件価格であっても毎月の返済額や総返済額は確実に増加し、住宅購入における家計負担は重くなります。
通常であれば、金利上昇は住宅需要を冷やし、不動産価格の調整要因として作用します。しかし、東京都心部の中古マンション市場を見る限り、そのような教科書的な動きはまだ確認できていません。供給制約、都心回帰の流れ、共働き世帯の増加、そしてインフレ局面における実物資産志向などを背景に、東京都心の中古マンション価格は依然として高値圏を維持しています。
「都心を外す」選択肢としての外郭主要駅
このような環境下で、実需層・投資検討層ともに注目せざるを得ないのが、東京都心の外郭部に位置する主要ターミナル駅周辺です。特に「東京駅を起点に一定時間以内でアクセス可能」という条件を満たすエリアは、通勤利便性を確保しつつ価格水準を抑えられる可能性があり、金利上昇局面において現実的な選択肢となります。
本稿では、東京駅から概ね同距離に位置する埼玉県・千葉県・神奈川県の主要駅をピックアップし、中古マンション市場の価格水準および上昇トレンド、さらにエリア特性を比較・整理しました。
東京駅30~40分圏:横浜・大宮・千葉の比較

以下のグラフでは、東京駅から30~40分圏に位置する横浜駅(神奈川県)、大宮駅(埼玉県)、千葉駅(千葉県)について、中古マンションの予想平均成約坪単価の時系列推移を示しています。

折れ線グラフから明らかなように、価格水準・上昇トレンドともに「横浜駅 → 大宮駅 → 千葉駅」の順となっており、これは各エリアの都市規模、ブランド力、集積度の差がそのまま価格に反映された結果と捉えることができます。
横浜駅周辺|完成度の高い首都圏第二の中枢都市
横浜駅周辺は、首都圏第二の都市中枢として商業・業務・観光・居住機能が高度に集積したエリアです。百貨店や大型商業施設、オフィスビル、ホテルが駅直結・徒歩圏に集まり、日常生活からビジネス、余暇までが一体化した都市機能を有しています。
交通面ではJR各線、私鉄、地下鉄が集中し、都内主要駅はもちろん、羽田空港や湘南方面へのアクセスも良好です。このような高い完成度を背景に住宅価格は外郭エリアとしては突出して高水準ですが、その分需要は極めて強く、流動性・資産性ともに優れています。価格はすでに高いものの、「都心に準じる立地」として評価され続ける可能性が高く、完成度の高い都市型ライフスタイルを求める層に適したエリアと言えます。
大宮駅周辺|実用性と価格バランスに優れた北関東の玄関口
大宮駅周辺は埼玉県最大のターミナルとして、商業・業務・交通機能がバランス良く集積する実用性の高いエリアです。駅前には大型商業施設が集まり、日常生活の多くが駅周辺で完結します。
新幹線を含む多数路線が利用可能で、東京駅へのアクセスも良好である一方、住宅価格は横浜駅と比べて抑えられています。そのため、都心通勤を前提としながらもコストパフォーマンスを重視する層に支持されてきました。人口流入が続く北関東エリアの玄関口として、今後も安定した住宅需要が見込まれる点は、中長期的な市場安定性を評価する上で重要なポイントです。
千葉駅周辺|価格の手頃さと今後の成長余地
千葉駅周辺は千葉県の県庁所在地であり、千葉市の中心として行政・商業機能を担うターミナルです。近年の再開発により駅ビルや周辺商業施設が刷新され、利便性は着実に向上しています。
東京駅へは総武線快速で直結しており、通勤圏としての基礎条件は十分に整っています。一方で、都市規模や路線の多様性という点では横浜・大宮に及ばず、その分住宅価格は比較的手頃です。初期コストを抑えたい実需層や、今後のエリア成長を見込む中長期視点の選択肢として評価できるエリアと言えるでしょう。
30~40分圏総括|「割安」という視点

これらを一覧表で整理すると、横浜駅が総合力で非常に強いエリアに見えます。ただし、東京駅からの所要時間が同等という前提に立つと、大宮駅や千葉駅は価格水準が低いにもかかわらず、資産性が極端に劣るわけではありません。特に成長性や需給の安定性を考慮すれば、「相対的に割安」と評価することも可能です。
東京駅20~30分圏:武蔵小杉・浦和・船橋の比較

続いて、東京駅から20~30分圏に位置する武蔵小杉駅(神奈川県)、浦和駅(埼玉県)、船橋駅(千葉県)について見ていきます。このゾーンは都心近接性がさらに高く、価格水準・需要ともに一段上の水準にあります。

こちらのグラフでも、価格水準および上昇トレンドは「武蔵小杉 → 浦和 → 船橋」の順となっており、都心近接性とエリアブランド力の差が明確に価格に反映されています。
浦和駅周辺|文教・行政拠点としての安定感
浦和駅周辺は埼玉県の県庁所在地として行政・文教機能が集積する落ち着いた都市拠点です。駅前再開発により商業利便性は向上しつつも、住宅地としての品格や住環境が保たれている点が特徴です。
JR複数路線により東京・新宿方面への通勤利便性も高く、大宮ほどの商業規模はないものの、その分ファミリー層の居住ニーズが強く、学区評価の高さも需要を下支えしています。価格水準は県内では高めですが、安定した実需に支えられた堅実な市場を形成しています。
武蔵小杉駅周辺|再開発が生んだ高密度成長エリア
武蔵小杉駅周辺は再開発によりタワーマンション、商業施設、オフィスが集積し、短期間で急成長した都市拠点です。JR線と東急線が交差し、渋谷・新宿・東京・横浜方面へ広範囲にアクセスできる交通利便性は、外郭エリアの中でも突出しています。
住宅価格はすでに高水準にありますが、共働き世帯を中心に実需が厚く、流動性も非常に高い点が特徴です。一方で供給量が多いため、築年数や立地条件による二極化が進みやすく、購入時の物件選別が極めて重要な市場でもあります。
船橋駅周辺|実需主導で堅調な生活拠点
船橋駅周辺は千葉県西部を代表する商業集積地で、生活密着型の利便性に優れるエリアです。JR総武線、東武線、京成本線が利用でき、都心への通勤利便性は県内でも高水準にあります。
価格帯は武蔵小杉や浦和と比べて抑えめで、単身者からファミリーまで幅広い需要を抱えています。派手な再開発は少ないものの、実需主導の安定市場として堅調な取引が続いています。
20~30分圏総括|武蔵小杉の強さと注意点

このゾーンでは武蔵小杉駅が際立って強いエリアに見えます。価格水準は高いものの、交通利便性・資産性・成長性のバランスは非常に優れており、有力な選択肢と言えます。
ただし、供給量が多いことから築年や立地による価格差が拡大しやすく、将来の資産価値に差が出やすい点には注意が必要です。金利上昇局面では「エリア選び」以上に「物件選び」が重要になることを、改めて認識しておく必要があるでしょう。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
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資本金 : 1億円