経験を活かして働きたいと考えるシニアは8割以上いる一方、選考時に高齢を不採用の理由として考慮したことがある採用担当者は6割以上。就業希望のシニアが職を得られない場合の経済損失は1兆390億8200万円
事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120)は、65歳以上の働く方300名と、企業の採用担当者300名を対象に「シニアの就業に関する意識調査」を実施しました。
調査の結果、これまでの経験を活かして働きたいと考えるシニアは多くいる一方、シニア採用を積極的に行っている企業はわずか2割。さらに「年齢(高齢であること)を不採用の理由として考慮したことがある」と採用担当者の6割以上が回答しており、経験とスキルを持つシニアと企業の間で大きなギャップがあることが明らかになりました。
また、こうした双方のギャップにより、就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失について試算したところ、およそ1兆390億8200万円であることがわかりました。
調査の背景
内閣府が公表した「令和5年度高齢社会白書」によると、2025年には国民の約3人に1人が、65歳以上の高齢者になると見込まれています。さらに、総務省統計局「労働力調査」によると、2022年の就業者数に占める高齢者の割合は13.6%で、就業者の7人に1人が65歳以上となっており、多くのシニアが65歳以降も働き続けています。
こうした状況を踏まえ、65歳以上の働く方300名と、企業の採用担当者300名を対象に意識調査を実施しました。シニアに対しては希望する働き方や現在の働き方について、採用担当者にはシニア人材の採用状況や採用したシニア人材の実態について聞いています。
調査サマリー
<65歳以上の働く方>
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現在希望通りの仕事に就いている方は8割(79.3%)。「5年以内に仕事探しをした方」に絞ると、約3人に1人(29.5%)が希望通りの仕事に就けていない
希望通りの仕事に就けていない理由は「自身の年齢が高いため(80.6%)」、「応募できる企業が少ないから(30.6%)」が上位に
8割(83.0%)が「これまでの経験やスキルを活かすことのできる職種で働きたい」と回答
活かせる・活かしたいと思う経験・スキルは「自分の意見を持っている」が38.3%で最多、次いで「若手や更新の教育・指導ができる(31.0%)」「円熟した顧客対応ができる(29.0%)」と回答
3人に1人以上(34.7%)が「年齢を理由にした偏見や差別を感じた経験がある」と回答
年長者だからと頼られる・期待されるポジティブな経験も多いが、「年齢を理由に希望の職種に就けなかった(9.3%)」「年齢を理由に仕事を回されないことがあった(7.3%)」などのネガティブな経験も一定ある
<採用担当者>
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8割以上(83.0%)が人手不足と回答する一方、現在65歳以上の人材の採用を積極的に行っているのはわずか2割(21.0%)
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65歳以上の人材の採用理由は「人手が不足しているから(56.6%)」が最多、次いで「スキルが高ければ年齢は関係ないから(32.8%)」「即戦力として活躍が期待できるから(24.7%)」という結果に
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65歳以上の人材を採用しない(できない)理由は「体力・健康面に不安(42.2%)」が最多、次いで「任せられる仕事がない、わからない(34.3%)」、「即戦力として活躍が期待できないから(24.5%)」が上位に
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選考時に応募者の年齢を不採用の理由として考慮したことがあると6割以上(63.0%)が回答
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「採用した65歳以上の人材が即戦力であったことがある」と約7割(67.7%)が回答
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即戦力だった65歳以上の人材の特徴は「経験・スキル・能力に自信を持ち、仕事に生かしている」が6割以上(66.4%)で最多
<調査概要>
調査名称:LIFULL「シニアの就業に関する意識調査」
実施期間:2024年3月25日〜3月27日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の65歳以上の働く方300名と、企業の採用担当者300名
調査主体:株式会社LIFULL
調査結果(65歳以上の働く方)
65歳以上の働く方300名に現在の働き方について聞いたところ、シニアの8割(79.3%)が現在希望通りの仕事に就いていると回答。また、「5年以内に仕事探しをした方」に絞ってみると、約3人に1人(29.5%)が希望通りの仕事に就けていないようです。希望通りの仕事に就けていない理由については、「自身の年齢が高いため(80.6%)」、「応募できる企業が少ないから(30.6%)」が上位に上がりました。再雇用ではなく再就職となると、希望通りの仕事に就けないことがあることが伺えます。
「これまでの経験やスキルを活かすことのできる職種で働きたいと思うか」という質問に対しては8割以上(83.0%)が「はい」と回答しました。具体的に自身の活かせる・活かしたいと思う経験・スキルについて聞いたところ、「自分の意見を持っている(38.3%)」が最も多く、次いで「若手や後進の教育・指導ができる(31.0%)」、「円熟した顧客対応ができる(29.0%)」の順に票が集まりました。
職場における年齢を理由にした偏見や差別についても聞いたところ、3人に1人以上(34.7%)が「年齢を理由にした偏見や差別を感じた経験がある」と回答。具体的には「年長者だからと業務で頼られることがあった(18.7%)」「年長者だからと即戦力として期待された(18.3%)」といったポジティブな経験がある一方、「年齢を理由に希望の職種に就けなかった(9.3%)」「年齢を理由に仕事を回されないことがあった(7.3%)」などのネガティブな経験もあることが分かりました。
調査結果(企業の採用担当者)
続いて、企業の採用担当者300名に65歳以上の人材の採用状況について聞いたところ、8割以上(83.0%)が人手不足であると回答していながら、現在65歳以上の人材の採用を積極的に行っているのはわずか2割(21.0%)ということが明らかになりました。
シニア人材の採用理由としては「人手が不足しているから(56.6%)」が最も多い結果に。「スキルが高ければ年齢は関係ないから(32.8%)」という声もありつつも、人材補填の意味合いが強いことがわかります。また、「シニア層の経験・知識が豊富だから」と回答している人は、65歳以上の採用を行なっている企業の採用担当者でも2割(20.2%)の回答にとどまり、採用担当者全体でみると約9割(86.7%)がシニアの経験・知識を重視していないということになります。シニアの8割(83.0%)がスキルを活かして働きたいと思っているなか、双方で大きなギャップがあることが分かりました。
一方、65歳以上の人材を採用しない(できない)理由についても聞いたところ、「体力・健康面に不安(42.2%)」が最多、次いで「任せられる仕事がない、わからない(34.3%)」、「即戦力として活躍が期待できないから(24.5%)」が上位に上がりました。
また、「選考時に応募者の年齢(高齢であること)を不採用の理由として考慮したことがあるか」どうかについては、採用担当者の6割以上(63.0%)が「考慮したことがある」と回答しています。
さらに、シニア人材の採用を行っている企業の採用担当者に「採用した65歳以上の人材が即戦力であったことがあるか」について聞いたところ、約7割(67.7%)が「即戦力であったことがある」と回答しました。即戦力だったシニア人材の特徴としては「経験・スキル・能力に自信を持ち、仕事に活かしている(66.4%)」が最も多い結果になりました。
現在シニア人材を採用しない(できない)採用担当者の「即戦力として活躍が期待できない」という声とは裏腹に、シニア採用を行っている企業の採用担当者の多くがシニアの経験やスキルを評価しています。企業側も「シニアに活躍を求めるのは諦めなきゃ」といった“老い”に対する既成概念から脱することが、今後重要になってくると言えそうです。
就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失は「1兆390億8200万円」!?
こうした双方のギャップにより、就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失について試算したところ、およそ1兆390億8,200万円であることがわかりました。
今回LIFULLが行った調査で、シニアに対して「あなたは何歳まで働きたいですか」という質問をしたところ、シニアの回答の中央値が「75歳」でした。そこで、総務省統計局「令和4年 就業構造基本調査」が公表している65歳~74歳の就業希望人口129万4000人と、厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」で公表している65歳以上の1世帯当たり平均稼働所得80.3万円を掛け合わせて試算しています。
シニア研究者 /「未定年図鑑」著者 三嶋浩子(みしまひろこ)氏のコメント
シニアの就労希望者を活かさぬ場合の「経済損失=1兆円強」、その背景とは?
シニアの就労意欲を残念ながら企業は活かし切れていないことが、今回の調査で浮き彫りになりました。さらに、65歳~74歳の就労希望者・約129万人が職を得られない場合の経済損失額は、1兆円強という試算が出ました。この数字は看過できない数字ではないでしょうか。
この結果の背景として考えられるのは、少子高齢化による生産年齢人口の減少、内閣府が2024年2月に発表した2023年の国内総生産(GDP)がドイツに抜かれ世界4位に転落したことです。労働人口の減少が、経済低迷に繋がったといえるでしょう。世界屈指の長寿国となった日本で、働く意欲が旺盛なシニア129万人は社会的資源です。少子高齢化により、生産年齢人口は今後減り続けるなか、「高齢であることを不採用の理由に考慮する」、このスタンスを維持できるでしょうか。働く意欲を持ち、経験やスキルを持つシニアを活かしていくような取り組みが広がっていくことに期待したいです。
<プロフィール>
高齢化社会において「シニアの人生をクリエイティブする」ため、キャリアコンサルタント(国家資格)を取得。大学講師、シニア研究、地方創生などの分野で活動中。著書に『未定年図鑑~定年までの生き方コレクション』(中央経済社)。朝日放送ラジオPodcast『未定年図鑑』出演中。
LIFULL「老卒採用」について(特設サイト)
調査結果から、採用担当者の約9割がシニアの経験を大切だと考えていない一方、シニアの約8割がスキルを活かして働きたいと持っているという、大きなギャップがあることが分かりました。その背景には、「歳相応の働き方をしなきゃ」「シニアに活躍を求めるのは諦めなきゃ」など、シニアや老いに対する既成概念が存在していると考えています。
そこで、「しなきゃ、なんてない。」をメッセージに掲げ、社会課題に取り組むLIFULLは、あらゆる人が年齢・性別・国籍などの属性に関係なく活躍するための取り組みの一環として「老卒採用」を開始します。“老い”に対する既成概念から卒業しようという想いと、これまでの“超経験”を活かしてご自身の可能性を切り開こうという情熱を持つ方のエントリーをお待ちしています。
詳細はこちらをご確認ください。
<募集要項>
募集ポジション
1. 営業(営業部門のアドバイザー/LIFULL HOME'S)
LIFULL HOME'S事業本部のCSO(Chief Sales Officer)である渕上敦浩と並走し、業務を行う
2. クリエイティブ(コピーライター)
ブランディング・マーケティング責任者のCCO(Chief Creative Officer)である川嵜鋼平と並走し、業務を行う
3. 法務(法務部門の社内研修の企画・講師、法務・コンプライアンスのナレッジマネジメントのアドバイザー、国内・海外のグループコンプライアンスのアドバイザー)
法務責任者のCLO (Chief Legal Officer)である平島 亜里沙と並走し、業務を行う
勤務地:LIFULL本社(東京都千代田区麹町1-4-4)
募集時期:2024年4月18日(木)〜6月10日(月)
募集方法:エントリーページから応募
応募条件:65歳以上の方
選考フロー:WEBエントリー → 書類選考 → 面談1~2回(オンライン)→ 決定
※実施スケジュール、面談方法などは変更となる場合があります
「しなきゃ、なんてない。」とは(特設サイト)
LIFULLでは、あらゆる人が自分らしく生きられる未来を目指して「しなきゃ、なんてない。」というメッセージのもと取り組みを続けています。CM「しなきゃ、なんてない。2021年」篇ではLIFULLが実現したい、社会課題が解決された未来を描きました。世の中の"当たり前"と"自分らしさ"の間で悩む方々が、「しなきゃなんてないさ」と未来に向かって歩き出すきっかけになれたら嬉しく思います。
株式会社LIFULLについて(東証プライム:2120)
LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。現在はグループとして世界63ヶ国でサービスを提供しており、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など、この世界の一人ひとりの暮らし・人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指し、さまざまな領域に事業拡大しています。