大和ハウスグループでは、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2023年度グッドデザイン賞」において、「公共の建築・空間」、「中〜大規模集合住宅」の2部門で、4プロジェクトが受賞しました。
■ 2023年度グッドデザイン賞受賞プロジェクト
■グッドデザイン賞について
グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みです。デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加しています。これまでの受賞件数は、50,000件以上にのぼり、受賞のシンボルである「Gマーク」はよいデザインを示すシンボルマークとして広く親しまれています。
●グッドデザイン賞公式WEBサイト URL:www.g-mark.org/
■「公共の建築・空間」部門受賞
●道路上空通路「新札幌アクティブリンク」
大和ハウス工業株式会社(事業主体)、大成建設株式会社、株式会社ドーコン、株式会社ネイアンドパートナーズジャパン
「新札幌アクティブリンク」(札幌市)は、複合再開発「マールク新さっぽろ」に設置された、駅・マンション・医療施設・商業施設など7つの施設をつなぐ円環状屋内空中歩廊です。
複数の建物を円環状につなぐ上空通路とし、札幌の冬でも歩きやすく回遊性のある空間をめざしました。また、北海道江別市「野幌」の自然や四季を表現するテキスタイル(※1)や床サインを採用することで、楽しい歩行体験を提供しています。歩廊空間としてだけでなく、地域住民がウォーキングやリハビリなど日々の生活で利用したり、地域の展示ギャラリーとして活用したりするなど、街のシンボルとなる空間を目指しました。
構造デザインでは、道路勾配に応じて全体を傾け、せん断力に応じて柱幅を徐々に変化させる構造を採用。構造部材=外壁とし、二次部材や仕上げ材を使用しないことで、部材の道路への落下リスクをなくしました。
※1.織物・布地などの部材のこと
【デザインのポイント】
●円環状の開放的な空間、野幌の四季を表現するデザインで、回遊する楽しさを創出
●複数の建築物をつないだ一体の共有物で、設計・施工・維持管理プロセスをデザイン
●部材の落下リスクがなくメンテナンスがしやすい、構造=意匠となる構造計画を採用
◎受賞評価コメント
軽やかで繊細な上空通路だ。多数の施設の機能を楽しくつなぎ、高い施工技術によって支えられている。厳冬期でも病院の患者が安全に「歩いてみたくなる空間」は貴重だろう。上空通路でありながら、地上への街路樹への世界が広がり、地上レベルとの一体化が進むことも期待したい。
■「中〜大規模集合住宅」部門受賞
●分譲マンション
「琅越龍洲花园」(ロウエツリュウシュウカエン)
大和ハウス工業株式会社
「琅越龍洲花园」(中国・江蘇省常州市)は、敷地面積約46,763㎡に開発した、12棟の商業・住宅施設からなる複合施設です。
日本人の施工スタッフが、日本での経験を活かしバーチャート工程やクリティカル工程(※2)を意識して施工管理を行いました。
デザイン面では、日本と中国の伝統建築のモチーフを融合した設計としました。二面採光のリビングダイニングなど中国で主流の間取りを中心としつつ、玄関に土間スペースを採用するなど、日本風の要素を取り入れました。
また、エントランス棟は、中国の伝統的な建築理念である「天人合一、渾然一体」(※3)を再現するため、「三合院」(※4)式の建物とし、屋根勾配を中庭に向けて設計しました。
建物の階層間には水平庇を配置することで、四季に応じて変化する日照時間や太陽の角度により、外観に異なる陰影をつける設計としました。さらに、古い街並みを残す水景や植栽などを織り交ぜることで、四季の変化を感じることができます。
※2.一連の工事工程で、最も時間を要する工程
※3.天(自然)と人は一体のものであるという思想
※4.3つの辺に建物を置き、中央を庭園とする建築様式
【デザインのポイント】
●全住戸内装付とし、日本の工程管理、品質管理を採用
●日本・中国の伝統建築要素と水平庇による陰影で、季節・時間の違いによる多様な見え方を演出した外観
●水景、桜の道、健康遊歩道など、健康配慮と自然共存の景観計画で、「江南水郷」(※5)の風景を演出
※5.中国江蘇省南部と浙江省北部を中心に分布する、中国の歴史ある街並みを残した景勝地
◎受賞評価コメント
中華人民共和国 江蘇省 常州市、オープンスペースのある高層建築が多く建ち並ぶ地域に、敷地面積46,763㎡で26階建て、25階建て、17階建て、12階建て、2階建てなど多様な高さのボリュームを配置した、住宅636戸、SOHO264戸、商業20区画の機能ある複合建築である。中国政府に「日本品質を前提とした」品質とデザインが求められたという結果、江南水郷風と日本建築を統合したというデザインは大変優れた計画である。日本では川に対して長手方向を面するように計画したプランが多いが、そのような配置だと川より奥の建物や道路からは川の眺望を感じることができないのである。この計画では、建築をできるだけ棟状に高層配置させて、オープンスペースの面積を多く確保し、川への眺望をできるだけ遮らないように計画した秀逸な配置がポイントである。品質の良い日本の技術で各地の環境への配慮に寄与していくという実績が、今後も期待されるところである。
■「中〜大規模集合住宅」部門受賞
●賃貸集合住宅
「コスモグラシア両国レジデンス」
株式会社コスモスイニシア
「コスモグラシア両国レジデンス」(東京都墨田区)は、地上10階建て、総戸数48戸の都市生活を再構築した賃貸集合住宅です。
ICTの普及により、プライベート(生活・趣味趣向)とパブリック(仕事)が近接化し、住まいに求められる機能の多様化も進んでいます。その中で、本物件の住戸空間では、デッドスペースとなる水回りを一体化し、空間を仕切る役割とすることで、用途ごとに空間を1stプレイス、2ndプレイスなどとして切り替えることのできる多機能な間取りとしました。
共用空間ではアイレベル(※6)を変え、植栽を設けることで空間に奥行きを持たせ、「たまり」機能を有する計画としました。
※6.人間の視線の高さのこと
【デザインのポイント】
●計画合理性を有しながら都市型賃貸住宅のコンパクトプラン(25㎡前後)のリデザインを実現
●床レベルを変化させ視点を切り替えることで、人びとが滞留できる広がりのある共用空間を創出
●吹付タイルを主としてランダムな木彫手すりを組み合わせた、立地に溶け込む外観デザイン
◎受賞評価コメント
コロナ禍を経て働き方が多様化し、住宅に求められる機能が大きく変化している。本件は25㎡という限られた住戸面積でありながら、水廻りを中央に配置することでワンルームから脱却し、小さいながらもシーンごとに居場所を分けることができるように工夫がなされている点を高く評価した。 水廻りと居室の間の間仕切りに、採光や通風が確保できる工夫があると、さらに快適性が向上するのではないかと思う。今後の改善を期待したい。 1階に設けられた広い共用部は居場所となるように計画されており、コンパクトな住空間を補完する役割を担えるのではないかと思う。都心におけるコンパクトな賃貸集合住宅の新しい試みであり、どのような新しい暮らしが展開されるのか、楽しみな集合住宅である。