住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)、中央日本土地建物株式会社(社長:三宅 潔 本社:東京都千代田区)は米コロラド州デンバー近郊で総戸数353戸の5階建て純木造賃貸用集合住宅を開発します。両社の協業は米ワシントン州シアトル近郊での賃貸用集合住宅開発に続き2件目です※1。
木造枠組壁工法を用いた純木造建築で環境配慮と経済性を両立し、交通利便性の高い立地、ロッキー山脈を望む眺望が特徴です。全米5位の大手デベロッパーTrammell Crow Residential(以下TCR)と共同で開発し※2、2023年10月着工、2025年6月の賃貸開始を目指します。
■エリア・物件の特徴
建設地はデンバー中心部から北に約16kmのノースグレン市。デンバー周辺は安定した雇用環境で人口増加が続いており、住宅需要が旺盛です。本物件は幹線道路に近接しておりテクノロジー、医療、金融関連企業が集積したブルームフィールド市まで車で15分、デンバー中心部まで20分、デンバー国際空港まで30分、ライトレールと呼ばれる旅客電車やバスの利用も可能で、高い交通利便性を活かして旺盛な住宅需要を取り込みます。
353戸の賃貸住宅の他、フィットネスセンター、コワーキングスペース、スカイラウンジなどの共用施設も充実。緑あふれるランドスケープでデンバー中心部の喧騒から離れた落ち着いた居住空間を提供します。丘の上に位置する敷地からはロッキー山脈を望む眺望を楽しめます。
戸建住宅と同様の2×4材や2×6材の規格品を用いた木造枠組壁工法を採用し、鉄筋コンクリート造と比較してコストを抑制しました。内装にも木材を使用し、木質感のある高品質な住居を提供します。また、一般的に木造建築は鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べ「建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)」が少ないという特徴があります※3。さらに木は吸収したCO2を炭素として内部に固定し、木を伐採して加工した木材製品(HWP:Harvested Wood Products)は炭素を長期間固定し続けます。本物件でも多くの木材を活用することで、高品質な住居の提供と脱炭素社会への貢献の両立を図ります。
■スキーム・参画の背景
住友林業の100%子会社SFA MF Holdings、中央日本土地建物の100%子会社Chuo-NittochiⅠLLCが組成したJVとTCRが共同出資する特別目的会社(SPC)が開発主体です。住友林業の100%子会社SFCアセットマネジメント株式会社(代表取締役:吉澤 雄次郎 本社:東京都千代田区)が本プロジェクトの組成をとりまとめ、参画企業との調整をします。
住友林業は2018年以降シアトル近郊のイサクア市、リンウッド市、ボゼル市、ウディンビル市、ショアライン市でTCRと賃貸用集合住宅を開発しており、ウディンビル市での開発には中央日本土地建物も参画しています※4。住友林業は集合住宅開発事業を拡大しており、現地優良パートナーであるTCR社とのさらなる事業機会を模索していました。今回、米国での不動産開発事業のさらなる拡大を目指す中央日本土地建物が参画し、再び両社の協業が実現。両社にとってTCRとのデンバーでの協業は初めてです。
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素への貢献を目指しています。長期ビジョンで事業方針の1つに掲げた「グローバル展開の進化」を推進し、米国でも脱炭素化への取り組みを加速します。
中央日本土地建物グループは、都市開発事業、住宅事業、不動産ソリューション事業、資産運用事業を手掛ける総合不動産グループです。脱炭素化社会の実現に向けて、環境性能の高い不動産の開発・運営や再生可能エネルギーの活用などを通じ、入居者や共同事業者など関わる全ての人とともに、自然環境と調和したまちづくりを推進しています。また、未来を見据えた新たな挑戦や成長への投資にも積極的に取り組むなか、米国での不動産開発事業や台湾・米国での再生可能エネルギー事業への出資など、海外における取り組みも加速しています。
※1.(2022年6月21日リリース)Alexan Woodinville:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-06-21.html
※2.TCRは米National Multifamily Housing Council発表の「NMHC 25 Largest Developers 2023」で5位にランクイン。
参考:https://www.nmhc.org/research-insight/the-nmhc-50/top-50-lists/2022-top-developers-list/
※3.林野庁調査をもとに住友林業の筑波研究所で試算(以下のグラフと表を参照)。林野庁「平成27年度 木材利用推進・省エネ省CO2実証業務報告書」の資材数量をもとに3階建て事務所(1,500㎡)の躯体、外部、内部(設備除く)を対象として、新築時から解体時までのライフサイクル全体を対象として算定しました。
3階建ての事務所(1,500㎡)を対象に算出
※4.(2021年4月14日リリース)Alexan Alderwood:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-04-14-01.html
(2021年10月7日リリース)Alexan Bothell:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-10-07.html
(2022年6月21日リリース)Alexan Woodinville:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-06-21.html
(2023年7月5日リリース)Alexan Shoreline:https://sfc.jp/information/news/2023/2023-07-05.html
■物件概要
物件名 所在地 賃貸床面積(予定) 住戸数(予定) 構造・工法 着工(予定) 賃貸開始(予定) |
:Alexan Northglenn :555 W 112th Ave Northglenn, CO80234 :3万1千㎡ (32万9千平方フィート) :353戸 :木造枠組壁工法 :2023年10月 :2025年6月 |
■Trammell Crow Residential Company概要
本 社 代表者 沿革 事業概要 |
:米テキサス州ダラス :Ken Valach (CEO) :70年以上の歴史を持つ不動産投資開発会社Crow Holdingsの傘下で、米国の集合住宅不動産会社として1977年に創業。 :不動産開発を手がけるデベロッパーで、特に経済が好調なエリアでの集合住宅開発を得意とする。創業以来、累計約26万戸の集合住宅を供給。 |
■SFCアセットマネジメント概要
本 社 代表者 設 立 事業概要 |
:東京都千代田区大手町 :吉澤雄次郎(代表取締役) :2020年11月 :住友林業グループ等が組成する投資ファンドに関する投資助言業務等 |
※SFCアセットマネジメント株式会社コーポレートサイト:https://sfcam.jp
(住友林業参考資料)
■木造建築の優位性
世界のCO2排出量の37%が建設セクターから排出されており※1、「暮らすときのCO2排出量(オペレーショナルカーボン)」はZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の普及で削減が進んでいます。一方、「建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)」の削減が今後の課題となっており、S造やRC造に比べてエンボディドカーボンの少ない木造建築が注目されています。また、樹木は光合成により取り込んだ炭素を伐採後も木材内に固定・貯留します。これを「炭素固定」といい、脱炭素社会の実現には炭素を固定した木材を用いた木造建築の推進が不可欠です。
※1. 出典:global alliance for building and construction(2023)
■CO2排出量を見える化するソフトウェア「One Click LCA」
住友林業グループは多くの不動産開発でエンボディドカーボン等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」を活用しています。建築物の木造化によるエンボディドカーボンの削減量や炭素固定量を見える化し、木造建築の優位性を発信しています。また、住友林業は日本単独代理店としてOne Click LCA を2022年8月に発売※2。One Click LCAの普及を通じて、社会全体の脱炭素設計を推進しています。
※2. 参考リリース : https://sfc.jp/information/news/2022/2022-01-27-01.html
■住友林業グループの中大規模木造建築
住友林業グループは2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030※3」で事業方針の1つに「グローバル展開の進化」を掲げ、中大規模木造建築のグローバル展開を推進しています。米国や豪州では先に木造戸建住宅事業が拡大しましたが、近年は木造での不動産開発にも注力しています。
現在は日本国内に加え、豪メルボルン、英ロンドン、米ダラス、米アトランタでマスティンバー※4を用いた中大規模木造建築のプロジェクトが進行中。2023年中には豪メルボルンの15階建て木造オフィス、米ダラスの7階建て木造オフィスが竣工を迎える予定です。米国では木造ツーバイフォー工法を採用した集合住宅の開発実績も多く、国内外での住宅・建築・不動産事業の多角化が進んでいます。
※3. 長期ビジョン「Mission TREEING 2030」動画(3分):https://www.youtube.com/watch?v=2ty-tASVWPk
※4. CLTやLVL等の複数の木材を組み合わせて成形した比較的質量や体積の大きいエンジニアードウッド
■中大規模木造建築の開発実績
■参考リリース
*1. 豪メルボルン/15階建木造オフィス:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-10-06-01.html
*2. 英ロンドン/6階建木造オフィス:https://sfc.jp/information/news/2023/2023-02-14.html
*3. 米ダラス/7階建木造オフィス:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-12-26-02.html
*4. 米アトランタ/3階建木造オフィス:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-12-01.html
*5. 東京都/桐朋学園宗次ホール:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-05-13.html
*6. 東京都/上智大学四谷キャンパス15号館:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-06-29-02.html
*7. 例えば、以下の事例があります。
米ダラス/5階建集合住宅:https://sfc.jp/information/news/2023/2023-06-19.html
米シアトル/5階建(地下2階)集合住宅:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-06-21.html
米シアトル/6階建集合住宅:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-10-07.html
米シアトル/5階建集合住宅:https://sfc.jp/information/news/2021/2021-04-14-01.html
米シアトル/8階建(地下2階)集合住宅:https://sfc.jp/information/news/2023/2023-07-05.html