株式会社コラビット(本社:東京都港区、代表取締役:浅海剛)は、『正直不動産』原案者の夏原武氏と、弊社代表取締役浅海剛・HowMaスタッフ渡邉雄也との対談イベントを行いました。この記事では、対談のダイジェストをまとめています。『正直不動産』のストーリーにおける哲学を随所に感じさせてくれる夏原さんと、日々不動産オーナーの声を聞き続けている弊社スタッフとの対話をテキストでもお楽しみください。
当日の対談の様子はこちら(https://www.youtube.com/watch?v=gQB94Po0s6s)
- 不動産会社を選ぶ際の注意点は?大手の不動産会社に頼めば、良い条件で売れる可能性が上がる?
夏原:TVコマーシャルをやっているような大手不動産会社はネットワークが広いので、買主にたくさん出会える可能性は高いですよね。大手であるということ自体が信頼につながるという側面もあります。
ただ、不動産というのは極めて地域性の高い特殊な商品なので、売りたいものはどこにあるのか、不動産会社はその場所に強いかどうかというのがすごく大切なことなんです。東京23区でも、港区で売りたいのか、足立区で売りたいのかで全く条件が違いますよね。
だから、その地域に関して詳しい・地域で継続して売買をした経験があるのかも非常に大きな売買成功のための要素なので、大手であるということだけでいい売買ができると思い込んではいけませんね。その思い込みはちょっと怖いなと思っています。
大手であること以外にも、地域に詳しく地域で経験があること、自分の売りたい物件のケースが得意なこと、色々な尺度で会社を選定する必要があると思います。
大手に全部任せてしまう悪い例を上げますと、専属専任契約をしてしまった場合ですね。専属専任って言葉の響きから「優先的に一番良くやってくれるんじゃないか」とイメージがあるとは思うんですけど、不動産って立地や需要などの条件で売れる売れないが決まるものなので、売れないものは売れないわけですよ。
選択肢もない、打ち手も1社任せ、挙句の果てには時間が経って売主に焦りが出てきた時に業者買取の提案をされ、最初の査定金額の7がけ6がけで買取されてしまうことがよくあります。大手に専属専任で任せたらいい条件で売れる、というのもまた思い込みですね。
- 不動産会社を選ぶ側のリテラシーが大切な時代、比較することで見る目を養う
浅海:確かにいいイメージのCMもやっていますし、会社規模という軸だけで選んでしまいがちなんですが、私は人が本当に大事だな、と思っています。知り合いの不動産会社に聞いた話なのですが、どれだけ優秀で非の打ち所がない人柄に見える営業マンでも、顧客のリテラシーによって接客を変えるそうなんですよね。ある意味「カモれそう」な相手には囲い込みを狙ったりと。
『正直不動産』の面白いところって、「正直にやっているだけで滑稽に見えてしまう」っていうこの業界の面白さだと思うんですよね。なので、不動産会社を選ぶ側のリテラシーというのが大切で、その上でしっかり営業マンの人を見極める顧客側のスキルが大切だとあらためて思いますね。
渡邉:私は、1社に絞るのではなく、比較してほしいなと思っています。2社3社と、面倒であってもその不動産会社さんの話を聞くことによって、「ここの会社の強みはここなんだな」「ここの会社はちょっと頼りないな」「自分の不動産ってこういう特徴があるんだな」と自分の不動産・取引が立体的・客観的に見えてきます。複数の方から話を聞くというのはポイントだと考えてます。
確かに複数のアプローチをするのは面倒なのですが、その面倒を引き受けるだけで数百万円高く売れるかもしれません。手間をかけてでも、2人3人、2社3社と話を聞いていただいた方が結果うまくいくケースの方が多いし、納得感もあります。
- 面倒な不動産取引で入り口を間違えるともっと面倒なことになる
夏原:そもそも不動産の取引って面倒なものなんですよね。確かに面倒だと思いますけど、その後のことを考えたら不動産会社・担当者選びという入り口を間違えるともっと面倒なことになりますよね。
入り口を間違えた結果、半年経っても一年経っても売れない、挙げ句の果てに安く買い叩かれるなんてことにもなりかねません。
私はいろいろなところで「良い営業マンってどうやって見分ければいいんですか?」と聞かれるんですが確かに非常に難しいです。ただ一つポイントだと思っているのはメリットよりもデメリットの話をしてくれる人を選ぶべきだということはよく言いますね。
例えば、「この立地条件でこの広さの場合、このくらいの金額で売れると言われていますが、実勢の成約事例を見るとこれの8掛けぐらいで決まってしまう事が多いんです」といった話を最初にしてくれるかどうかですね。
自分の希望金額を伝えた時に「その金額で売れますよ、大丈夫ですよ」みたいなことを言う人はあまり信用しない方がいいですね。実際に現れるかどうかわからない客を「居る」と言っちゃっているんですから。これは商売の基本だと思います。
不動産の仲介と言うのは高く売りたい売主と安く買いたい買主を一つの価格でつなぐ仕事なんです。なので双方に我慢してもらい、妥協点を納得させる必要があります。なので、メリットばかり強調してくる人が担当で出てきたなら僕はやめたほうがいいと思いますね。
- 不動産取引においても大切なのは「口コミ」によるリアルな評価
夏原:
あともう一つのポイントは「そこの会社で実際に取引をしたことのある人を探す」ことですね。
結局、不動産取引っていうのは口コミが最大の武器なんだと思っています。
友人の友人、知人の知人でもいいですから、そういう人を探して「取引はどうでしたか?」「その担当者は誰でしたか?」と聞いてみてください。担当者がそこで聞き出せたら、その担当者を指名していけばいいんですよ。
大手でも最近では、営業マンの過去の経歴・取引を公開していて、担当者を選べるようなシステムになっている会社も出てきています。これは我田引水かもしれませんが、『正直不動産』の影響も少なからずあるのではないかと思っています。
渡邉:実際、何も事前調査もせずに店に行ってしまったり問い合わせをしてしまうと、その時空いている担当者を当てられてしまいますので、事前に口コミや事例などを調べて最初に指名するのは大切になりますね。
営業マンの仕事のスタンスって千差万別です。売れてしまえば何でもいいや、と雑に仕事をこなす方もいれば、もう一度売るんじゃないか・友人を紹介してくれるんじゃないかとその後のつながりまで考えて丁寧に接してくれる営業もいるので、本当に人の見極めは大事になってきます。
- 高く売りたいのか、早く売りたいのか、自分の希望を明確に伝えることが何より重要
夏原:
あと
基本中の基本なのですが、遠慮せずにちゃんと自分の希望をはっきり伝えることですよね。
金額を高く売りたいのか、時間が無くて早く売りたいのか、どんな属性の人に売りたいのか、そういうことをはっきりと伝えた方がいいです。「誰でもいいんで売ってくれればいいです」みたいな頼まれ方をされると営業マンも困るし、トラブルになりやすいんですよ。
全て満たすことは難しいので、自分が譲れるところははっきり伝えておいた方がいいですね。時間がかかってもいいから希望価格で売りたい、ここまでは価格が下がってもいいから早く売りたい、と最初に打ち合わせをしておけば、営業マンも動きやすくなりますし、連絡も取りやすくなり、結果取引も成功しやすいように思います。
- 比較のため一括査定をする方が多いと思うのですが、提示された査定額はどこまで信じていいのか? その額で売れると考えていい?
渡邉:まず大前提として理解しておきたいのは、仲介は買取ではないので、提示した査定金額で売れるものではないんですね。仲介の現場での査定金額というのは、あくまで成約予想です。
高い査定金額が出て舞い上がってしまう気持ちも分からなくないのですが、一番高い査定を出した会社に売却を依頼してしまうのは間違いであると言い切れますね。
例えば、A社が4000万円、B社が5000万円と査定金額を出してきたとします。周辺の成約事例を分析して、A社の査定の方が売れる確率が高い場合はA社を選んだ方が戦略上良いんです。売れる確率が低い価格をつけてしまうと、売買期間の長期化・値下げ・安い金額での業者買取のリスクが高まってしまいます。
ただ、周辺の成約事例って我が国のシステム上エンドユーザーには分からないんですよね。その情報の非対称性によって判断材料が少ないのは元々エンドユーザー側に不利な状況なんです。
その情報の非対称性を解消する意味でも、査定を出してもらったら必ず「査定の根拠」を聞くことが最重要になります。その営業マンが周辺の成約事例から導き出した根拠をしっかりと話してくれれば、売れる確率もイメージしやすいので無理のない値付けが出来るようになります。
夏原:そうなんです。査定金額は不動産会社が買い取る金額ではなく、「売れる可能性があります」という予想にすぎないんです。その金額を最大値だととらえて、1割〜1割5分落ちるところまで想定しておくと、落胆も少ないです。
例えば5000万円の査定が出たら、4000万円くらいまで落ちることを頭に入れておけば、焦ることがなくていいと思います。5000万円と査定されたから5000万円入ってくるんだ、と思うのは危険な発想なのでやめた方がいいですね。
- そもそも売りやすい物件、売りづらい物件というのはある?
夏原:売りやすい・売りづらいって、要はそこに客がいるか・いないかって話だと思うんですよ。そういう観点では地域性が影響しますよね。
また、不動産の売却って、駅から近いから売れる、という単純な話ではないんですよね。車で移動する世帯には、幹線道路へのアクセスが第一要件になるので、駅から遠くても十分に客がいる可能性があります。つまり、売りやすい・売りづらいって売主と買主のマッチ度なんですよね。
また、不動産会社と物件の相性も大きいですね。ワンルーム売却が得意な会社はファミリーが苦手、マンション売却が得意な会社は戸建が苦手、など不動産会社個々に得意な分野があるので、自分の物件はどういう不動産会社が得意にしているかをリサーチすることをおすすめします。
売りづらい物件で思い浮かぶのは、、例えば古すぎるとか、リノベーションが必須であるとか、売る時に出さなきゃいけないお金がたくさん出てくるような物件はどうしても売りづらくなってしまいますね。
先ほどの話に戻ってしまうのですが、売主として売りづらい物件を持っていてある程度お金を出さないといけない局面になった時に、もともとこのあたりまでなら損してもいいというラインを決めておけば、不動産会社の売るための提案をのみやすいと思うんですよね。
売りやすい・売りづらいことを自分で断定してしまう前に、その物件が買主にとってどれだけのメリットがあるのか、っていうのをきちんと考えないといけないですし、そういうアドバイスをしてくれる担当者を探すべきです。
- 不動産市場でも「需要と供給」が常につきまとう:その場所にその物件が欲しい人がどれだけ居るか
浅海:
不動産も他の商材と同じように、需要量と供給量が存在するので、
やはり欲しい人が少ない地域・狭いユーザーしか欲しがらない物件は売りづらいと言えると思います。
例えば郊外の空き家や更地がたくさん点在する住宅地で、家余りが起こっているような状況で、築20年以上経っているような家を売るのは非常に難易度が高くなりますね。解体費用を含めた価格が周辺の更地の価格よりも高ければ、まず売れないのではないでしょうか。
渡邉:狭いユーザーしか欲しがらないという話の例えで、建売住宅の話をしますね。建売住宅のチラシを見て思われることも多いと思いますが、どの家も間取りが似ていますよね。LDKがあって、3つか4つ部屋があって、という感じで。また、内装も小ざっぱりと白を基調にしたものが多いと思います。
あれは、日本のファミリーの需要に一番合ったスペックなんですね。建売業者も営利企業なので、マーケティングで一番多く売上が取れる間取りを研究しているわけです。なので、経験上建売の中古住宅は比較的売れやすいですね。
反対に注文住宅で、施主のこだわりを詰め込み過ぎたものは対象ユーザーがどんどん狭くなってしまうので、どうしても売れにくくなってしまいますね。注文住宅自体は素晴らしいのですが、何かあれば売るかもしれない、という出口戦略を家作りのときに少しだけ意識すると売りづらさは軽減されるかもしれません。
- そのほかに、不動産売却で損をしないために知っておくべきことはありますか?
浅海:何度も言っていますが、人の見極めは大事だと思いますね。営業マンも人間なので、売上目標のためには嘘をつく瞬間もありますし、あまりにリテラシーの低い顧客だと囲い込みを狙うときもあるかもしれません。カモにならないためにも、不動産の取引の基本的な知識・慣習・査定の基本などは勉強して武装していただきたいですね。
HowMaにも「いつかのための不動産売却講座(HowMa無料登録者限定コンテンツ)」( https://www.how-ma.com/ )というコンテンツを展開しているので、損をしないためにぜひ読んでいただければ、と思います。
渡邉:仲介現場に居た立場から言うと、売却する際には時間に余裕をもって欲しいですね。住み替え・転勤・相続などの理由でギリギリのスケジュールで売却を進める方も少なくないのですが、焦って売却を進めるとろくなことがありません。
売却が長期化すると言う理由で、そもそも最初の値付けも低めに抑えて売却をスタートしてしまいます。売れる兆しがないと精神的な余裕がなくなり、簡単に値下げ、安い金額の業者買取をのまなくてはいけないリスクが高まります。時間に余裕を持って、情報収集や販売戦略を練って欲しいですね。
手前味噌になりますが、東京23区や神奈川の一部地域限定で弊社で提供している「HowMaオンライン売却」( https://www.how-ma.com/sell_service )
では、売主さんと不動産会社の間にHowMaのスタッフが完全中立の立場で入り、売却戦略のアドバイスや情報提供を行い、損をしない不動産取引を行っています。ぜひチェックしてみてください。
夏原:よくこういうご相談を受けるんですけど、「売却で損をする」ってどういうことなんだろう?っていつも思うんですよね。
例えば、自分が住んでいたマンションが3000万円で売れたとします。その半年後に同じマンション内の下の階が4000万円で売れたという話を聞いたとします。それって損なんですか?ってお話で、自分が売りたいときに売れたのであれば損ではないと思っているんです。
例えば自分が買ったバッグが、1ヶ月後のバーゲンで半額で売られていたとします。それを見て損をした、と思うか?と言う話に近いんですね。ましてや不動産は一定期間その家で幸せな生活をして、さらに売ることでお金を得るわけですから、誰かと比較をするということ自体がそもそも変な話ですよね。違う時間軸のものを価格比較すること自体をやめた方がいいと思います。
渡邉:損をした、と言う感覚に陥る原因として「売主さんの納得感」があると思うんですよね。不動産会社がこの金額は妥当なんだよっていう根拠を示して、それに納得して売却したのであれば、後で損したなっていう感覚は生まれないと思うんです。
損得ではなく、本当に腹落ちする納得感を生み出すためには、周辺のマーケットを熟知した、納得感のある査定・売却提案をしてくれる営業マンに任せる。それに尽きますね。
夏原:ただ、一つだけ「絶対に損」という取引があります。それは業者による買取です。必ず相場の7掛けと6掛けで引き取って満額で売りに出すだけですから。
渡邉さんもおっしゃっていましたが、時間の余裕があれば買取再販には当たりません。慌てるから結局業者の言いなりになってしまうんですね。
以上のことをまとめると、不動産売却で損をしないポイントは、
- 時間に余裕を持って取引すること
- 業者買取をさせないこと
の2点に尽きますね。
- 不動産売買はどういうときに行われるのか:人生の次のステップへの転換点で最も大切なこと
夏原:そもそも不動産売買は儲けるために行うものではないと思っているんです。売買のタイミングって、人生の次のステップに行くときがほとんどですよね。
より広いとこに住まなければいけない、家族が増えました、家族が減りました、会社を変わるのでもっと便利なとこに暮らしたい、リタイアして田舎でのんびり暮らしたい、何か新しいことを始めるので手元にお金が欲しい、など人生が変わるタイミングで不動産売買を行うことが多いです。ヤドカリの貝のように体に合わなくなった貝は捨てて、その時の体に合った貝に入る、といった感じで、売買のタイミングって人生のステージに合った不動産を見つけるタイミングなんだと思っています。
なので購入するときに考えるべき要素って、いかに利便性を持つか、いかに快適な空間になるか、ということが第一義であって、売るときの出口戦略はあくまでも副次的なものですよね。
その副次的なものがメインになっちゃうのは、昭和時代に不動産バブルが崩壊したときの発想に近いと思うんです。儲かるとか得をするみたいな要素を入れること自体間違っていると思っているんですよ。
繰り返しになりますが、ローン残債の相殺状況など経済的な計算は行い、業者買取にならないよう時間に余裕を持って取引をしながら、損をしないように動き、新しい住まいにいかにお金を使えるか、ということが大切なことだと思っています。そのくらいの気持ちで動けば、不動産売買における後悔・損をした感覚というのは減るんじゃないかな、と感じています。
<会社概要>
株式会社コラビット (http://collab-it.net)
代表取締役・CEO 浅海 剛
[本社住所]東京都港区芝浦 1 丁目 3-10 第三東運ビル8F
[事業内容]
HowMa(https://www.how-ma.com/)の開発・運営、スマホアプリ・WEBサービスの開発、保守
[不動産推定技術提供先(一例)]
パナソニック、野村證券、みずほ銀行、中央電力、明和地所、リノベる。、ハウスドゥ、BIPROGYなど多数
<代表取締役・CEO 浅海 剛プロフィール>
ファーストキャリアは金融系SE。横浜に戸建てを購入した直後、転職を機に通勤時間が4時間に。「戸建ては売れない」と思いこみ、家に縛られながら通い続け離婚危機に。こうした持ち家への "あきらめ" を無くすため、2015年に気軽に自宅の価格を把握できるAI査定「HowMa」を開発。自身の家は「HowMa」のAI査定額と10万円差で売却。誰もが安心して家を売ることのできる仕組みを作り、2030年までに中古物件の年間流通額を現在の4兆円から5兆円に増やすことを目指す。