金曜日, 11月 15, 2024
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東京で増える外国人 どこから来てどこで暮らすか ~外国人人口の動態を徹底分析~

グローバル都市不動産研究所 第30弾(都市政策の第一人者 市川宏雄氏監修)

 投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。

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 このたび同研究所では、調査・研究の第30弾として、全国と東京都の外国人人口の推移に加え、23区における国籍・地域別の増減実態や注目エリアを分析した結果を紹介します。

【01】全国、東京都の外国人人口・割合の推移

コロナ禍で落ち込んだ外国人人口 直近2年で急増し対前年比増加率は10%超に
全国の外国人の2割が集積する東京 増加率・全人口比率ともに平均を大きく上回る 

全国的な増加傾向においても東京が突出 

 少子高齢化で人口減少社会が進展するなか、外国人の存在感が急速に高まっています。今後の日本の持続的な経済成長、国民生活の向上のため、外国人労働力の活用や外国人材の積極的受け入れなどの議論も進みつつあります。果たして、東京の外国人の実態はどのような状況なのでしょうか。今回のレポートは、全国と東京都における外国人人口の推移、東京23区内での国籍・地域別に見た各区の状況や増減の実態についてみていきます。

 全国の外国人人口の推移【図表1】をみると※1)、2013年の198万200人から2020年の286万6,715人まで右肩上がりで増加し、2021、22年はコロナ禍でいったん減少するものの、ふたたび急増して2024年時点で332万3,374人に至っています。2023、24年の対前年増加率はいずれも10%を超え、コロナ明け以降の増加がとくに目立ちます。総人口に占める外国人人口の割合(以下、外国人割合)も1.5%(2013年)から2.7%(2024年)へと約1.7倍に上昇しています。

 東京都の推移をみると、2013年の38万5,195人から2020年の57万7,329人まで増加を続けました。2022年に51万7,881人まで落ち込んだものの、これ以降の2年間で約13万人急増して2024年には64万7,416人となっています。2023、24年の増加率はいずれも12%前後で、全人口に占める外国人割合も2.9%(2013年)から4.7%(2024年)に上昇し、いずれも全国を大きく上回る数値となっています。

 また、全国の外国人人口に占める東京都の割合(2024年)も19.5%(=64万7,416人/332万3,374人)であり、東京に大きく集積している状況がみてとれます。

※1)2012年7月に外国人登録制度が廃止され、外国人住民も住民基本台帳法の適用対象に加えられるようになった2013年1月からの推移をみている。


【02】東京都における外国人の国籍・地域別内訳の推移

増加を続ける中国と微減の韓国で約半数 ベトナム、フィリピン、ネパールが続く
ミャンマー、インドネシアは約150%の増加率で急伸中

直近7年間で動く国籍・地域別ランキング

 次に、東京都にどのような国籍・地域の外国人が住んでいるのかをみていきます。

 2024年時点の外国人人口の国籍・地域別内訳(上位10か国・地域)【図表2】をみると、中国25万7,198人(外国人人口の39.7%)、韓国8万7,955人(同13.6%)の2カ国でほぼ半数を占めています。次にベトナム4万4,087人(同6.8%)、フィリピン3万5,634人(同5.5%)、ネパール3万5,310人(同5.5%)、台湾2万1,771人(同3.4%)と続いています。

 2017年から2024年にかけての上位10か国の推移【図表3】をみると※2)、2017年時点ではフィリピンが3位でしたが、2018年にベトナムがフィリピンを上回り、引き続き3位に位置しています。また、2024年にはミャンマーがインドを上回って8位に、ランク外だったインドネシアがタイを上回って10位に躍り上がっています。この7年間の国籍・地域別の増加数(増加率)では、中国が7万人余り(増加率38.4%)増加した一方、韓国はほぼ横ばい(800人の減少)の状況にあります。ベトナム(1.6万人、58.8%増)、ネパール(1.3万人、55.8%増)、インド(0.7万人、69.4%増)の3カ国が約60~70%の増加率をみせ、その他ではミャンマー(1.2万人、140.9%増)とインドネシア(0.6万人、163.2%増)の2カ国が140~160%程度の増加率で急増しているのが目を引きます。

※2)東京都「外国人人口」統計の国籍・地域別内訳に関しては、2016年10月まで「中国」の数値に「台湾」が含まれているため、2017年1月以降のデータで集計・分析している。


【03】東京23区内における外国人の居住動向と注目エリア

都心エリアの人口増加 中国・韓国国籍の富裕層が牽引か
南・東南アジア地域は城北・城東エリアでの伸びが顕著に

外国人割合の推移

 続いて、東京23区内の外国人の状況を各区別にみていきます。

 東京23区内の外国人人口【図表4】は、2024年時点で区全体では54万2,864人を数えます。各区別の人口では、新宿区4.4万人、江戸川区4.3万人、足立区3.9万人、江東区3.7万人、豊島区3.3万人、板橋区3.2万人、大田区2.8万人、北区2.7万人の順に多くなっています。

 外国人割合をみると、区全体では4.4%(2017年)から5.6%(2024年)と急ピッチで上昇しています。2024年時点の各区別の外国人割合は、新宿区12.6%を筆頭に、豊島区11.2%、荒川区9.7%、台東区8.7%、港区8.0%がとくに高く、北区7.6%、江東区6.9%、中野区6.3%、江戸川区6.2%、文京区6.0%が続いています。  

 この7年間の外国人割合の増加ポイントでみると、北区(2.0ポイント)がもっとも高く、次いで江戸川区・文京区(どちらも1.8ポイント)、中央区・江東区・豊島区(いずれも1.7ポイント)、足立区・葛飾区・板橋区(いずれも1.6ポイント)などが続き、文京区や中央区といった都心エリアのほか、城北・城東エリアでの増加が目立っています。

外国人人口の増加率 

 2017年から24年までの外国人人口の動向【図表5】を細かくみると、区全体では2017年から20年までに7.5万人増加し、22年にかけて5.6万人減少するものの、24年までの2年間でふたたび11.2万人増え、この7年間の増加数は13.2万人(32.2%増)となっています。

一方、この7年間の各区別の増加率では、中央区(67.9%増)、文京区(53.0%増)、千代田区(44.8%増)と都心エリアが高い伸びを見せ、次に足立区(43.5%増)、葛飾区(43.0%増)、板橋区(42.7%増)、江東区(41.9%増)などが続いています。増加率でみると、これまで外国人がそれほど多くなかった中央区、文京区、千代田区において急速に増加していることがみてとれます。

国籍別にみた外国人の動向

 それでは、この7年間の各区別の増加の状況を、国籍別にみていきましょう。ここでは、とくに人口の多い中国と韓国、近年の増加率が高いベトナム、ネパール、ミャンマー、インドを取り上げます。

<都心部に急増する中国人>

 中国国籍の人は、新宿区、豊島区のほか、江東区、江戸川区、板橋区などの城北・城東エリアに多く住んでいますが、この7年間の推移でみると文京区(109.6%増)、中央区(105.2%増)、千代田区(91.3%増)のほか渋谷区(85.6%増)など、都心エリアや渋谷区での増加率がかなり目立っています。これは、晴海など臨海部のタワーマンションがある中央区や、東京大学や国立の小中学校があり教育環境が充実している文京区など、都心部の住環境や教育環境を求める富裕層の動向が影響していると言われています【図表6】。

<新宿区で人口を大きく減らす韓国人>

 韓国国籍の人は、多くの韓国料理屋や雑貨店があり、韓流カルチャー発信地の新大久保で知られる新宿区を筆頭に、足立区、荒川区、江戸川区などに多数住んでいましたが、コロナ禍で大きく人口を減らし、2024年時点でも多くの区でコロナ禍前の人口に至っていません。ここ7年間の推移でみると、むしろ中央区(28.1%増)、渋谷区(20.2%増)で増加率が高くなっており、中国人と同様に富裕層が都心部に住む傾向が強くなっているとみられます【図表7】。

<江戸川・足立区などで増えるベトナム人>

 ベトナム国籍の人は、全国各地で技能実習生や特定技能者として製造業、建設業、農業・漁業などで働いていますが、首都圏では留学生が多いようです。かつては日本語学校がある新宿区、豊島区に多く住んでいましたが、2024年時点では、家賃も比較的安価で交通の便の良い江戸川区(総武線の小岩駅周辺)や足立区、大田区などに住み、日本語学校に通うという生活をしているとみられます。ここ7年間の推移でみると、足立区(230.5%増)の伸びがとくに目立っています【図表8】。

<新宿・豊島・大田区のほか杉並・中野区で増えるネパール人>

 日本の本格的インドカレー屋はネパール人経営が多いことで知られますが、ネパールからの留学生数もベトナムに次いで多くなっています。ネパール国籍の人は、かつては新宿区、豊島区に多く住んでいましたが、近年は大田区でも増加しています。また2013年、杉並区荻窪に世界初のネパール人学校「エベレスト・インターナショナルスクール・ジャパン」が開校し、杉並区、中野区でも人口が増えつつあります。ここ7年間の推移でみると、留学生の増加もあって足立区(189.9%増)、板橋区(184.4%増)の伸びが顕著です【図表9】。

<新宿・豊島・北区などに多く住むミャンマー人>

 ミャンマー国籍の人が多く来日するようになったのは、民主化要求デモ(1988年)を発端とする激しい反政府運動の混乱により母国を離れた人たちの一部が、ミャンマー人僧侶の営む寺院がある新宿区中井に集まったためと言われています(今は高田馬場がミャンマーコミュニティとして有名)。新宿区、豊島区、北区に多く住んでいますが、近年は技能実習生や特定技能者としての来日が多く、ここ7年間の推移でみると、足立区(883.9%増)、練馬区(417.3%増)、板橋区(307.5%増)の伸びがとくに目立っています【図表10】。

<江戸川・江東区を中心に徐々に広がるインド人>

 インド国籍の人の多くは、コンピューター2000年問題で多くの企業がインドのIT技術者を呼び寄せ、都心への通勤がしやすい東西線沿線の西葛西駅周辺に多く住み始めたのが来日のきっかけと言われています。2024年時点でも江戸川区と隣接区の江東区に、23区全体の7割近い約1万700人が住んでいます。ここ7年間の増加でみても、この江戸川区(113.4%増)と江東区(109.5%増)の伸びが高いですが、葛飾区(166.7%増)、足立区(106.3%増)などでも増えつつある状況がみてとれます【図表11】。

 このように東京では、外国人労働者や留学生の受け入れに伴って外国人人口が急増し、それぞれ

の国籍・地域のコミュニティを築きながら生活を営みつつあります。

 近年の区別の推移では、中央・千代田区といった都心エリア、足立・板橋といった城北エリア、葛飾・江東区といった城東エリアの伸びが顕著でした。また国籍別では、都心では中国・韓国国籍の人、城北・城東エリアでは南・東南アジア地域の人が集積する傾向がみられました。

 各エリアの状況・特徴をふまえつつ、外国人が安心して生活できるような住まいやまちづくり、各コミュニティの支援といった多国籍共生社会の形成は、今後ますます重要になっていくでしょう。


【04】都市政策の第一人者 市川宏雄所長による分析結果統括

東京では全国に先駆けて外国人人口が急増
不動産価格や生活利便性などで国籍によって居住地選択の嗜好異なる

 コロナ禍で落ち込んだ外国人の人口が直近2年で急増し、対前年比で増加率が10%を超えました。

全国で、2013年の約198万人から2020年に約286.6万人、2024年では約332.3万人になっています。

 東京都には全国の外国人の2割が集積し、特に23区では人口に占める外国人割合が2.9%(2013年)から4.7%(2024年)に上昇、約54.3万人を数えます。

 その内訳は中国と韓国で約半数を占めますが、ベトナム、フィリピン、ネパールがそれに続きます。また、ミャンマー、インドネシアは約150%の増加率で急伸しています。2024年時点では、中国が25.7万人で外国人人口の約4割、韓国8.8万人(13.6%)で、ベトナムが4.4万人(6.8%)で続きますが、2018年にフィリピンを上回り3位となっています。

 都心エリアの人口増加は中国と韓国国籍の富裕層が牽引し、南アジア、東南アジア地域は城北・城東エリアでの伸びが顕著です。外国人の数は、新宿区4.4万人、江戸川区4.3万人、足立区3.9万人、江東区3.7万人、豊島区3.3万人、板橋区3.2万人、大田区2.8万人、北区2.7万人の順となっています。

とりわけ、都心エリアで急増する中国人が目立ち、文京区(109.6%増)、中央区(105.2%増)、千代田区(91.3%増)、渋谷区(85.6%増)となっています。ほかの区では、江戸川区、足立区などで増えるベトナム人、新宿区・豊島区・大田区・杉並区・中野区で増えるネパール人、新宿区、豊島区、北区などに多く住むミャンマー人、江戸川区、江東区を中心に徐々に広がるインド人が特徴となっています。唯一、新宿区で韓国人が人口を大きく減らしています。

 外国人労働者や留学生の受け入れに伴って東京では、全国に先駆けて外国人人口が急増しています。中央・千代田区といった都心エリア、足立・板橋区といった城北エリア、葛飾・江東区といった城東エリアでの伸びが顕著であり、エリアごとに国籍別の集積が異なります。不動産価格や生活の利便性などで国籍によって居住地選択の嗜好の違いが垣間見えます。グローバル化が進む東京において、もはや欠かせない存在となった外国人労働者や留学生の動向から目を離せません。


【参考文献】

室橋裕和『日本の異国―在日外国人の知られざる日常』晶文社, 2019年5月25日

産経新聞「東京23区の外国人増加率、中央、文京など都心で顕著 タワマン、教育環境求める中国人ら」, 2024年6月25日

ビザサプリジャーナル「日本の有名な“コリアンタウン”について調べてみた!」(2020年5月29日公開), https://kigyosapri.com/visa/note/9740/ , 2024年9月30日閲覧

ビザサプリジャーナル「日本にある“フィリピンタウン”、“ベトナムタウン”について調べてみた」(2020年5月29日公開), https://kigyosapri.com/visa/note/9744/ , 2024年9月30日閲覧

ビザサプリジャーナル「日本で有名な“タイ人タウン”、“ネパール人タウン”、“ミャンマー人タウン”」(2020年6月26日公開), https://kigyosapri.com/visa/note/9974/ , 2024年9月30日閲覧


取材可能事項

本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。

ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画部 広報担当までお問い合わせください。

市川 宏雄

市川 宏雄(いちかわ ひろお)

生年月日 :1947年 東京生まれ(76歳)

略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。

世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。

現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。

金 大仲

金 大仲(きむ てじゅん)

役職  :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長

生年月日 :1974年 横浜生まれ(50歳)

略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。

会社概要

会社名  :株式会社グローバル・リンク・マネジメント

会社HP :https://www.global-link-m.com/

所在地  :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階

代表者  :代表取締役社長 金 大仲

設立   :2005年3月

資本金  :5億68百万円(2023年12月末現在)

事業内容 :投資用不動産開発、分譲、販売、仲介

免許登録 :宅地建物取引業 東京都知事(4)第84454号

      賃貸住宅管理業 国土交通大臣(01)第0001837号

      不動産特定共同事業 東京都知事 第114号

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