●背景
生活クラブと庄内地域の関係は米、豚肉、農産加工品など「食(Food)」の提携に始まりました。約50年が経過し、現在では域内13生産者との提携に至っています。「食(F)」の提携関係を超え、再生可能エネルギーの普及、福祉や共助など生産地と消費地それぞれが抱える問題を解決するパートナーへと成長しました。さらに酒田市など庄内地域の自治体も一緒になって「食(F)」、「エネルギー(Energy)」、「福祉(Care)」を可能な限り庄内地域で自給し、連携しながら持続可能な社会づくりを目指す「庄内FEC自給ネットワーク構想」を推進しています。
このたびの包括協定では、以下の12の項目での連携を定めました。その内容は食や農、環境、エネルギーなど、人が生きるために土台となる「社会的共通資本」の持続可能性や災害支援に留まらず、文化や健康、「生きがい」など、共に包括的機能を担う行政と協同組合が市民、組合員の暮らしのゆたかさを守り、支えていく内容となっています。
●協定項目
(1)食の安全・安心に関すること。
(2)健康と福祉の向上に関すること。
(3)環境保全に関すること。
(4)自然エネルギーの振興に関すること。
(5)農業の振興に関すること。
(6)地域のまちづくりの推進に関すること 。
(7)教育、文化及びスポーツの振興及び発展に関すること。
(8)災害が発生した場合における支援に関すること。
(9)生涯活躍のまち構想など、地域への移住定住人口と交流人口の増加に関すること。
(10)地域循環共生圏の形成に関すること。
(11)その他、4者が必要と認めること。
(12)上記項目の取組みに関する情報発信に関すること。
この日は同時に、準備を進めてきた「庄内福祉コミュニティ構想」および「災害時応急生活物資の供給等」の覚書を取り交わしました。これに基づき生活クラブ組合員の庄内地方への移住希望を支援し、庄内の生産者・行政・地元大学や地域の方々と共に取り組むまちづくりへとつなげていく計画です。この間、生活クラブと酒田市で進めてきた移住者向け住宅と地域交流拠点を含む「TOCHITO(とちと)」を中心として、FECが循環する生産地域づくりを共に進めてまいります。
<調印者各代表からのコメント>
■酒田市長 丸山至様
酒田市では本年度、民間事業者と公民連携に関する実施方針を策定しています。それは社会的責任の視点をもち、それを進めたいと考えている民間企業・団体と連携し酒田市の活性化をはかるという方針です。本日の包括協定はその先例になります。生活クラブと㈱平田牧場やJA庄内みどりなどの提携生産者の皆様との長年の深い提携関係を礎に、今回の協定では幅広い内容の連携が定められました。今後、酒田市生涯活躍のまち構想に基づき、生活クラブの皆様が移住されて、提携生産者や市民の皆様と生産活動や地域活動に関わる好事例を確信し、拠点周辺を中心に賑わいのある地域を作ってまいりたいと思っております。これまで以上に連携を深め、より広く新しい展開につながることで地域の発展にご貢献賜りますようお願い申し上げます。
■庄内みどり農業協同組合 組合長 田村久義様
生活クラブ連合会とは平成25年の1月に遊佐町、当農協との3者で共同宣言を締結しました。この宣言も地域農業と日本の食を守り、持続可能な地域社会へと発展させること、地域福祉、災害協定など多岐に渡るものでした。このたびの4者協定でも食、エネルギー、福祉のしくみを地域でつくりあげていくことを定めており、それは当農協の事業や理念と相通ずるものです。新たに酒田市とも協定が締結でき、本日を迎えたことは大変光栄で、当地域の発展へ寄与することを願っております。
■生活協同組合庄内親生会 理事長 新田嘉七様
我々庄内親生会は、生活クラブと提携する13の庄内地域の生産者を中心に作った生協です。生活クラブのなかでは33番目の一番新しい地域生協です。設立の基本は、庄内で生産される食料の自給と庄内で発電されるエネルギーの自給、そして地域住民が一体でつくる参加型福祉の実現です。私たち組合員一人一人が、この包括協定の締結を契機に、なお一層の地域社会の持続可能な発展に寄与、協力させて頂きたいと考えます。
■生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 会長 伊藤由理子
本日、この協定締結式の前に、酒田市と事業者によって移住者向け住宅と地域交流拠点形成事業の基本協定が結ばれました。私たちは構想から足掛け6年、この事業に関わらせていただき、いよいよ事業開始となるこの日を迎えられ、感慨深く思っています。庄内への移住を検討している当生協組合員にとっても、新しい暮らしが具体化する喜ばしい日となりました。
このたびの協定は、行政と3つの協同組合で締結いたしました。この4者ともに、市民や組合員の生活まるごとを守り支える役割であり、つまりは地域社会を含めてよりよくしていこうという組織です。SDGsという誰もが避けては通れない課題に対して、行政と協同組合がパートナーシップを組んで解決にあたることは世界的な流れとなっていますが、日本では先駆的な試みだと思います。とはいえ、ようやく食、エネルギー、福祉を地域で市民が自治し循環させるための「部品」がそろった段階です。これからこの地域の方々や移住してくる方々と一緒にどう発展させていくかのスタートです。引き続きご協力を賜りたく思っています。
■庄内地域と生活クラブのこれまで連携
●庄内地域には米や青果、豚肉などの一次産品とその加工品の提携生産者が大勢います。生活クラブでは1974年から毎年、組合員約70名が庄内の各種生産現場を訪れて学ぶ「庄内交流会」を実施してきました。約50年継続してきたことにより、生産者との提携が深まるだけでなく、関係人口の創出にもつながりました(2020年、2021年はオンライン実施)。
【庄内交流会の様子(2019年度)】
●生活クラブ組合員とその提携生産者で作った山形県遊佐町の庄内・遊佐太陽光発電所。ここで発電した電気は生活クラブのでんきの共同購入「生活クラブでんき」に供給されています。また、その収益を庄内地域の地域づくりや環境保全に活用すべく2020年に「庄内自然エネルギー発電基金」を酒田市に造成しました。
【庄内・遊佐太陽光発電所 2019年稼働】
●2016 年に生活クラブと酒田市は首都圏在住の移住希望者への情報発信などを行う業務委託契約を締結し、「移住定住」だけではない、「自分らしい暮らし」を創造するプログラムを共に進めてきました。その拠点施設が「TOCHITO」です。居住棟「TOCO」と交流棟「COTO」からなり、「COTO」の建設は、「庄内自然エネルギー発電基金」からの助成が提案されています。
■生活クラブについて
生活クラブは組合員数約41万人の21都道府県、33の地域生協で組織される生活協同組合です。事業高は1千億円。生産から廃棄に至るまで安全や健康に配慮した品物の共同購入活動を通じ、持続可能な生活スタイルを実践しています。また、現在では、生活クラブ生協から派生したワーカーズ・コレクティブも各組織エリアを中心に300以上展開し、福祉や居場所づくりなど地域に必要な事業を作り出しています。食(F)、エネルギー(E)、福祉(C)を地域で市民が自治し循環させるサステイナブルな社会づくりを実践しています。
ホームページ: https://seikatsuclub.coop/