木造建築普及のカギとなる「相欠き合わせ柱式ラーメン構造」で最強を証明
AQ Group(本社:埼玉県さいたま市西区、代表取締役社長:宮沢俊哉)は10月5日、6日にものつくり大学(埼玉県行田市)で開催された木造耐力壁の日本一を決める第7回「カベワンGP(グランプリ)」に参戦しました。AQ Groupを主体とする「AQチーム匠」は、東京大学木質材料学研究室・網中木材と決勝戦で対峙。大接戦を制し3年連続でトーナメント優勝を達成、耐力壁最強を証明することになりました。
AQ Group本社ビルに採用された「相欠き合わせ柱式ラーメン構造」
大会仕様にアレンジした耐力壁「相欠きのジャンヌダイク」がNo1に
カベワンGPは耐力壁の日本一を決める、年に1度のイベントで全国の大学や専門学校、建築関係企業などが集まります。2体の木造耐力壁の柱脚を固定し、どちらかの壁が破壊されるまで互いを引き合い、壁の強さを競うトーナメント方式の大会です。2日間に渡り全チームが組み立て、トーナメント予選、トーナメント本選、解体までを実施。材料費の安さや加工数の少なさ、組み立て時間や解体時間、デザインなども審査対象となっており、トーナメント優勝だけでなくトータルバランスに優れた耐力壁を称する総合優勝もあります。
前回大会でトーナメント優勝と総合優勝を果たしているAQチーム匠は、第7回目となる今大会も順当に勝ち進みました。決勝戦では、予選から圧倒的な強さを見せつけてきた東京大学木質材料学研究室・網中木材と対決。50kNを超えたあたりでAQチーム匠の中柱に亀裂が入りましたが、そこから脅威の粘りをみせます。53.5kN前後で東京大学木質材料学研究室・網中木材の耐力壁が破損し、辛くも勝利。AQチーム匠は2022年から3年連続でトーナメント優勝となり、耐力壁の強さ日本一の座を守り切りました。
毎年、テーマに沿ったオリジナル耐力壁で出場しているAQチーム匠。今大会は、相欠き合わせ柱式ラーメン構造を大会用にアレンジした耐力壁「相欠きのジャンヌダイク」で参戦しました。相欠き合わせ柱式ラーメン構造は、2024年3月に完成したAQ Groupの純木造8階建て本社ビルにも採用されている技術です。日本の伝統技術でもある相欠き加工技術を使い、8階建てのビルを支えるほどの高耐力を実現しています。
また、デザイン面は、木質構造現わしの美しさを兼ね備えています。相欠き部分の上下2ヵ所は、連なった十字。この意匠をロレーヌ十字に見立て、ジャンヌダルクを連想しました。大工の手によって使い続けられた木構造の英雄と、中世ヨーロッパの古き英雄を組み合わせ「相欠きのジャンヌダイク」と名付けました。
阪神淡路大震災を教訓に、耐震技術開発を促進
27年の歴史を持つカベワンGPとAQ Group
カベワンGPは20年の歴史をもつ「木造耐力壁ジャパンカップ」を前身としたイベント。木造耐力壁ジャパンカップから数えると、今年で27年目となります。大会発起人は、東京大学名誉教授の稲山正弘氏で、1995年に発生した阪神淡路大震災の後にささやかれた「木造は弱い」という偏見を払拭し、耐震技術開発の促進と技術者の育成を目的に1998年からスタートさせました。AQ Groupも20年以上前からスポンサーとしても参加しており、学生や他企業と競い合いながら大会と木造建築の発展に寄与してきました。
AQチーム匠は稲山氏とタッグを組み、複数回のトーナメント優勝や総合優勝を獲得。昨年は大会史上最大耐力となる71.2kNを記録するなど、カベワンGPの“高い壁”となっています。カベワンGPに出場した多くの学生が卒業後、木造建築技術者として企業などの第一線で活躍しており、「打倒、AQチーム匠」を目指してカベワンGPに参戦するケースもあります。
地震大国日本の家屋に必要なものとは
AQ Groupが考える、家の「強さ」と「自由」
AQ Groupが手掛けた純木造8階建て本社ビルの技術も、カベワンGPが発祥です。耐力や破壊性状などの貴重な実践データを得ることができる場として、研究開発にも活用。中大規模木造建築を実現する「組子格子耐力壁」や、今大会でも活躍した「相欠き合わせ柱式ラーメン構造」はカベワンGPにおける実践から着想を得ています。本社ビルは「木のみ構法」というAQ Groupオリジナルの構法で建築されていますが、これは日本で最も普及している木造軸組構法の技術をベースとし、中大規模木造建築の普及を目的として考案されたもの。稲山氏とAQ Groupが共同開発しています。
また、AQ Groupの注文住宅ブランド「AQURA HOME(アキュラホーム)」では、無駄な柱や壁を取り除き、大空間を実現させる「AQダイナミック構法」を採用しています。こちらも中大規模木造建築の技術を応用しており、従来、鉄骨造やRC造でしか実現できなかった空間を木造で実現させる技術の礎になっています。
複数のプレートが重なり合う日本は地震大国です。日本の建築物は常に、地震に対応できる強さが必要になります。一方、建築物に強さを求めてしまうと、設計自由度が下がってしまうものです。木造建築の復興を目指すAQ Groupとしては「強さ」と「自由」が共存する建物が理想と考えます。大きな地震にも耐えることができ、建物に大空間をもたらす「相欠き合わせ柱式ラーメン構造」はまさに、強さと自由を兼ね備えた技術。木造建築普及の鍵になると期待しています。